このページの本文へ
ここから本文です

追い込まれた内閣改造では、反転攻勢のきっかけにならない

支持率低下の主たる原因として各紙が指摘するのは、公的保険料の納付記録が宙に浮いたという年金問題と、松岡農水相の光熱水費問題などの「政治とカネ」の問題。特に松岡氏の光熱水費問題、緑資源機構に関連した疑惑が追い討ちをかけた。これでは、野党どころか、与党からも批判の大波が起きる。

松岡氏は出処進退に窮したのではないか。辞職すれば、野党の勢いが増して、不祥事を起こした他の閣僚に矛先が向かう。そうなればドミノ倒しのように閣僚が次々と辞職に追い込まれる。

そうかと言って、松岡氏をかばい続けてきた安倍首相に「罷免のカード」はない。仮に罷免したとしたら、辞職と同じように罷免のドミノが起きるかもしれない。

ふり返ると、吉田内閣、佐藤内閣、あるいは小泉内閣など、長期に政権を担当した首相は人事に冷酷非情な面があった。小泉首相の真骨頂は、田中真紀子外相を辞めさせ、中曽根康弘元首相を引退させたところにあると言ってもよい。「公人の立場で私情を殺す」ところに指導者の人事の要諦がある。安倍首相にはそれが欠けているのだろう。

安倍首相は、これまで参院選前の内閣改造を否定してきたが、これで内閣改造は必至になった。しかし、先手を打つ内閣改造と、追い込まれた内閣改造は、政治効果が大きく違う。大改造をしても、反転攻勢のきっかけにはならないのである。

公務員改革に向け愚直に走ることが大事

4月ごろ、内閣支持率の潮目が変わったように見えたのは、外交成果もさることながら、「公務員制度改革」に対する強い決意が好感されたからだ。それが、今度の年金問題で帳消しになってしまった。

首相が強行しようとしている「社会保険庁改革」も評価している人は多くはない。機構改革は、今までの不始末を棚に上げ、天下りの弊害を逆に助長することになりかねないからだ。改革の大きさは抵抗の大きさで測られる。社会保険庁の改革には目立った抵抗がないではないか。

安倍首相は、今回の不幸を契機に、政策の原点に帰るべきだ。「公務員制度改革」に愚直に突っ走るだけでも、内閣に対する世間の目は大きく変わる。小手先きの対応は傷を深めるだけだ。

田中 秀征(たなか・しゅうせい)

1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部政治学科を卒業。83年衆議院議員に初当選。93年6月に自民党を離党して新党さきがけを結成、代表代行。自民党時代は宏池会(宮沢派)に所属。細川政権の発足に伴い首相特別補佐。第1次橋本内閣で経済企画庁長官。現在、福山大学教授。「民権塾」主宰。

最近刊の「判断力と決断力」(ダイヤモンド社)をはじめ、「日本リベラルと石橋湛山」(講談社)、「梅の花咲く 決断の人 高杉晋作」(講談社)、「舵を切れ 質実国家への展望」(朝日新聞社)などの著書がある。

(全 2 ページ中 2 ページ目を表示)

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

記事検索 オプション

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る