今から10年前、千葉県銚子市の水産加工会社で働く中国人研修生を取材したことがある。そのあまりにもひどい受け入れ先である協同組合の中間搾取に怒った研修生の中には、研修現場を放棄して逃走した者もいた。その逃走研修生はやがて横須賀の農家で働くようになった。
夏は朝6時に出かけ、夜は9時頃にようやくアパートに戻る。過酷な肉体労働に懲りた彼は何度も辞めようと考えた。しかし、仕事を辞めたいと言うたびに、雇い主である60代の日本人に泣きつかれた。働き手のない日本人はどうにかして彼を引き留めようとする。後継者のない農家の悲劇もそこにある。彼は自分の動揺に対して、次のように語った。
「自分がもしここを出たら、お爺さんはもう農業をやっていけない。いくら捜しても若い働き手が見つからないからだ。そのことを考えるとお爺さんのことが不びんに思えて、働き続けることにした。」 この話は日中友好の美談として捉えるよりも、日本の農村実情を映した悲話として受け取るべきだろう。休耕地を再び農産物の生産に利用する話もあるが、肝心な働き手がいない。未明に起きて、日がすっかり暮れるまで重労働の野良仕事に耐えられるような日本の若者が何人いるのだろうか。
日本の食糧の自給率を高めよう、日本産農産品を食べよう、と簡単に言える状況ではない日本の現状に日本人は気づくべきだ。
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