やがて中国は労働者輸入国になる(1)
今後、中国大陸における加工貿易型産業は難しくなっていく。それは今まではあまり論じられてこなかった中国大陸における人材確保の構造的問題があるからだ。その構造的問題とは「中国大陸における労働力は豊富にはない」という点だ。筆者のこの主張は意外と受け止める読者も多いだろう。しかし現実は、近い将来中国が東南アジア諸国、北朝鮮、アフリカ地域からの労働力に頼らざるをえない状況になるだろうと予測できる。すでにこの傾向は一部の地域で見られるようになっている。規模が大きいだけに、中国の労働力問題は、中国一国にとどまるものではなく、世界経済にも大きな影響を与える重大さを潜めている。
この意外な現実を4回に分けて論じたいと思う。今回は地方からの出稼ぎ労働者が不足しているという現実だ。この点については以前、このコラム「春節に顕在化した地方出身人材の課題」で、蘇州の日系電子部品メーカーが春節の休日残業を契約社員に求めたら辞表を叩きつけられ、家庭との団らんを仕事より優先させるといった問題を取り上げた。
そのときは、出稼ぎ労働者にとっては、より条件のよい仕事が見つかりやすいので、数年間働いた職場でもあっさり辞めてしまうという従業員の行動の分析を試みた。しかし最近は、賃金が低いから、または会社での長期就職意識が薄いから安易に職場を捨てた、という問題ではないのではないかと思うようになった。むしろ、労働力に対する需給バランスが逆転したという構造的問題によって生じた現象であると確信するようになった。
それは最近遭遇した不可解なことがきっかけである。北京の友人から国際電話で求人の手伝いを頼まれた。北京の郊外に新しくできたリゾートホテルで若い男女を大量に採用したい。中卒以上、健康ならよし。職業トレーニングはホテル側が費用を出して行うので、未経験者でもぜんぜん問題はない、という。友人は電話の中で、ハードルは高くない、ということを再三強調した。
そこで、読者の皆さんもたぶん疑問を抱くだろうと思う。日本語が堪能な人材を探し求めるならいざ知らず、こうした「民工」(出稼ぎの農民)を雇うことぐらいで、なぜわざわざ日本にいる私のところに国際電話をかけてくるのか。私もそう思った。しかもオリンピックの開催を控える北京だ。オリンピックの現場は見られなくても、大会が開催される北京の熱気を体験できるだけでも、仕事を探し求める農村の若者たちにとっては大きな魅力ではないか。しかも、重労働の建築現場ではなく、環境がよい郊外型のリゾートホテルなのだ。しかし、友人の切羽詰った声を聞き、よほどのことがなければ深夜に国際電話を寄こさなかっただろうと理解し、力を貸すと約束した。
友人が電話をかけてきたのは、昨年夏私は友人に西部地域の農村を取材した経験を話したからだ。ここ2、3年、私は中国の西部地域と中部地域を重点的に回っていた。昨年の夏は寧夏回族自治区の国家級貧困地域とされる西吉県を訪問した。水不足に苦しむ同県が農民を極貧状態から脱出させる効果的な方法のひとつとして選んだのは、農民たちを出稼ぎに行かせることだ。西吉県の中心街(中国語では「県城」)に通じる舗装道路の横には、労務輸出で地元経済を振興させようと呼びかける大きな看板が立っている。西吉県政府も労務輸出を自らの実績として大々的に宣伝している。友人だけでなく私も、北京のリゾートホテルの求人情報を伝えたら西吉県はこの話に飛びつくだろうと思った。
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