食の安全に関心高まる中国
7月中旬、中国出張を終え、滞在日程を予定より1日繰り上げて日本に帰った。7月にしては「戦後最大」といわれる台風4号の日本上陸を意識してのスケジュール変更だったが、もうひとつ潜在的な理由があった。南京にいたとき、日本のメディアが私のコメントを求めて国際電話をかけてきた。中国産または中国製食品の安全問題についてだった。食の安全に対しては直接人間の健康に結びつくことから、この問題は大きくなりそうだと直感した。
案の定、日本に戻ると、この問題に関する報道は、油に火をつけたかのようにあっという間に燃えさかった。ダンボールを具材にした肉まんや赤インクを注入したスイカといったショッキングな話が中国のメディアで採り上げられ,その報道を追従する形で日本のメディアが次から次へと採り上げた。日本で中国製食品への批判がそのままエスカレートしていくのかと思いきや、今度は180度の大逆転だ。わずか2日後に、ダンボール肉まんは、実はテレビ局の契約社員が作ったやらせ番組だということが判明した。
ジェットコースターのように情勢が激しく転換するなかで、私もテレビ出演に追われた。一日に8回メディアの取材を受けた日もあった。トイレに行く暇も食事を取る時間、いや水を飲む隙さえもなかったほどだった。食品の安全に対する日本人の関心の高さを改めて思い知らされた。
日本人の多くは今度の一連の事件と報道で、中国製食品に対して危ないという印象を抱いてしまった。そう思われても仕方ないと私も思う。信頼を取り戻すためには、中国政府や食品生産メーカーがゼロからの再出発を覚悟して努力するしか選択肢はない。
安全面において問題が多い中国産食品は、逆説的にいえば、ようやく中国国内でも問題視されるようになってきたとも解釈できる。
数年前、湖南省の省都長沙市にある日系のデパート、平和堂百貨店を訪問したとき、百貨店内で出会った二人の老夫婦の言葉がいまでも鮮明に記憶に残っている。60歳以上と思われる二人はごく普通の年金生活者にしか見えなかった。おじいさんは手に持っていた、質素としか形容できないかばんを開けて、中身を見せてくれた。なかには水が一本入っていた。「私たちはここが好きです。普段、一本の水を買うにしてもここに来ます。何も買わないときも、こうして店内をぶらぶらするのが好きです」二人は口を揃えてそう教えてくれた。
平和堂百貨店の日本人幹部も店の経営方針を教えてくれた。
「店がオープンする前、私たちは消費者たちがきっと価格を厳しくチェックするだろうと覚悟していた。しかし、運営してみるとどうも違うと感じた。調査してみたら、消費者からは安全と安心を求められているのを知った。価格をめぐる過当競争に突入するよりも、むしろ安全、安心を前面に出して、消費者に認識してもらうことが重要だと軌道修正している」。
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