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実際、横浜中華街のレストランの経営者から愚痴を聞かされたことがあった。「旅行社から中国人観光客に昼食を提供してもらえないかという打診が来たよ。一人当たり1000円の予算なんだ。それではあまりにもメリットがないから断りたかった。ただ、付き合いもあるので、結局、私の故郷からのツアーなら、という条件で引き受けることにした。」

格安ツアーで訪日した中国人の多くは、日本のよさをほとんど体験せずに日本を後にする。彼らのうちのどれくらいの人がリピーターとして日本を再度訪問するのだろうか。とても不安になる。

一方、ビジネスで日本を訪問した中国人の多くは、実際にリピーターとして日本を訪問しているか、または再訪する意向を持っている。5、6年前に、上海の不動産会社の社長らが作る少人数の訪日団を東京で迎えたことがあった。赤坂のふぐ料理を案内したところ、とても感激してくれた。この春には、表参道ヒルズを見学するという名目でまた日本を訪れた。お花見も兼ねての旅行だ。相変わらずの少人数の訪日だが、一回の旅行で日本に落としたお金は少なくとも一人当たり数十万円だ。東京はかなり見たということで、次回は日本の地方を見てみたいという希望が出ている。

彼らにも悩みがある。このような自由な形で日本を訪問できるのは、いつもビジネスという目的で日本のビザを申請できるときに限るからだ。ビジネス目的でビザを申請する場合には、招聘する日本側の招待状が必要など手続きが面倒になる。これに対し観光旅行ならば中国側の旅行会社でビザを申請できるにもかかわらず、彼らが格安の日本ツアーを申し込むことは決してない。

私は、グレードが高い日本ツアーのブランドをつくるべきだと痛感している。Aという旅行会社に頼めば手頃な旅行商品を手に入れられるが、グレードの高さを求めたければBという旅行会社に頼んだほうが安心だとか、同じ旅行会社であっても旅行商品にランク付けがある、といった選択肢があればよい。日本の観光業界は、中国側の格安ツアーを単に受け入れるのではなく、一丸となって中国の旅行会社と力を合わせてグレードの高い観光ツアーをつくるべきだと私は思う。悪貨が良貨を駆逐するようなことは間違っても起きてはいけないが、迅速に手を打たなければそうした最悪の事態が起こる恐れが十分ある。観光立国をも模索する日本の新しい課題だ。

莫 邦富(モー・バンフ)

1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。

「蛇頭」、「中国全省を読む地図」、翻訳書「ノーと言える中国」がベストセラーとなり、話題作には「日本企業がなぜ中国に敗れるのか」、「これは私が愛した日本なのか」、「新華僑」などがある。

最新刊に「mo@china 莫邦富・中国レポート」、「中国の心をつかんだ企業戦略」。現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。

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