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その効果は主催側が狙った通りに現れている。いいや、それ以上と言ってもいいかもしれない。わが家にもその波が押し寄せてきた。家内は衛星放送で流れてくるオーディション番組の放送時間になると必ずテレビに釘付けになり、食い入るように画面を見つめている。一番応援しているチベット族の青年の成績に一喜一憂する。完全に粉絲となってしまった。しかも、東京にも擬似「粉絲団」が誕生した。某中華レストランを経営する会社の女性社長が家内の親密な戦友となり、テレビを見たあと、深夜にもかかわらず電話で互いに感想を交わす。女性社長が上海に出張したときも、わざわざ感想を交わすための国際電話をかけてくるほどだった。

後に、そのチベット族青年が映画の主演に起用され、映画宣伝のために日本を訪れた。国際交流基金で働く娘が彼を取材することになった。すると、女性社長と家内が大興奮し、娘を口説いてなんとか娘に付いて取材現場に行くことに成功した。応援してきたこのチベット族青年を実際に目にした女性社長と家内の満足ぶりと興奮ぶりを目の当たりにし、「いい歳をしたあなたがたはいい加減にしておきなさい」と思っていた私もついつい感化され、ファンとしてのその情熱に脱帽した。

一方、日本の歌手などを応援する粉絲たちのなかには、日本で行われるコンサートを見るため互いに連絡しあい、ある程度人数がまとまると旅行社に働きかけて「看CON団」という観光ツアーを組むものもいる。ちなみに、看CON団とはコンサート鑑賞ツアーをいう。日本への旅行の最大の目的は応援するアイドルのコンサートを追っかけて観ることにある。ショッピングや観光はその合間にするというのが特徴だ。こうした動きを見て、旅行社は相次いで、看CON団を作るようになった。ひょっとしたら、中国人の日本ツアーの新たな主力商品になるかもしれない。

全体としては、日本のアーティストは韓国のアーティストほど中国では認知されておらず、一部のファンを除けば、最新の情報もリアルタイムには中国に伝わっていない。それでも浜崎あゆみや木村拓哉などは広く知られている。「彩虹」または「彩虹楽隊」と訳される「ラルク」こと「L'Arc〜en〜Ciel」や、「GLAY」もかなり認知されている。

そこで閃いた。日中経済交流は必ずしも製造業や形のある商品とは限らない。コンサート、観光、CDの発売などファンを作るビジネスチャンスはいくらでもある。押し付け的な売り込みではなく、いかにファンをたくさん作り、いかに楽しく消費してもらうか、といった環境の整備が新しい課題となるかもしれない。日本の新しいゲーム機なども仕掛け方次第では、中国人消費者の心をつかむ絶好のチャンスとすることも可能ではないかと思う。

しかし、飛び越えなければならないハードルも少なくない。中国の報道によると、最初の看CON団を日本に送り込んだ際、ツアーの参加者が全員若い女性であるのを見て日本側からは「国際結婚の見合いグループではないか」と疑われたという。旅行社側がビザ発給を担当する在中国日本大使館や総領事館に事情を理解してもらうよう努力する必要もあるが、大使館や総領事館のビザ審査担当者ももっと中国の最新事情を学んでほしい。

先日、在日中国大使の王毅氏が東京で講演したとき、日中間の交流拡大、特に訪日中国人の需要拡大を図る意向を示した。王大使は「2006年に海外を訪問した中国人は3400万人を記録した。日中間の相互交流450万人のうち訪日中国人は80万人に留まっており、海外を訪問した中国人全体の2%から3%にしか満たない」と問題を指摘したうえで、「(中国から日本への訪問者数は)現在の4倍以上の340万人になると思う」と将来への期待にも言及した。

中国人観光客を増やす方法の一つは、粉絲たちが構成する看CON団をたくさん受け入れることだ。日本も中国人を対象とした粉絲経済を積極的に推し進めたらどうだろうか、と提案したい。

莫 邦富(モー・バンフ)

1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。

「蛇頭」、「中国全省を読む地図」、翻訳書「ノーと言える中国」がベストセラーとなり、話題作には「日本企業がなぜ中国に敗れるのか」、「これは私が愛した日本なのか」、「新華僑」などがある。

最新刊に「mo@china 莫邦富・中国レポート」、「中国の心をつかんだ企業戦略」。現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。

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