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ここまで話を聞いた幹部は運転手の話にすっかり興味を示してしまった。運転手は話を続ける。

科学的な方法、統計学的な方法で商売をすべきだ。毎日、いくら地下鉄の駅の前で待っていてもたいして稼げない。知識で自らを武装すべきだ。ある日、上海駅に行くお客さんがいた。お客さんが指示した道ではなく運転手は高架道路を勧めた。遠回りになるからとお客さんは嫌がったが、運転手は説得した。いつものルートの料金50人民元でいい。超過分はいただかない。実際は運転手が勧めたルートの方が4km余計に走ったが、25分も時間短縮になった。実際の料金よりも10人民元ほど節約できてお客さんは喜んだ。実は運転手もうれしかったという。10人民元の売り上げ減少とガソリン代4km分に相当する1人民元のコストアップを伴ったが、それと引き換えに25分間の時間コスト、つまり14.5人民元を節約できたのだ。

上海大衆タクシーにいる2万人の運転手の手取りは、ほとんどが毎月3000人民元〜4000人民元で、よくて5000人民元くらいだ。8000人民元以上は2〜3人程度しかおらず、その運転手はそのうちの一人だという。

ここまでくると、幹部はもうこのスーパータクシー運転手の話しのとりこになっていた。

「だから私は常に楽しい。稼ぎが多いから喜んでいるのだろうと言われるが、それは違う。常に楽しい気持ちで仕事をするから稼げるのだ、と私は言いたい。仕事がもたらしてくれる喜びを知ることが大事だ。人民広場で交通渋滞に巻き込まれると、たいていの運転手はいらいらする。だが私はこの時間を利用してこの都市の美しさを体験する。ほら、きれいな女の子が車の前を通っていくだろう。そびえ立つ近代的な高層ビルの住宅は買えないけど、見ていて気持ちがいい。空港に行くときは両側の緑が美しい。メーターに目をやるとすでに100人民元を上回っている。気分は最高だ。どの仕事にもよいところがある。仕事を通してそのよいところを見いだし、楽しむのだ。」

空港に着いた幹部は、名刺を差し出した。「今週の金曜日、マイクロソフト社で、社員たちにあなたがどのようにタクシーの商売をしているのか講演していただけないでしょうか。」

今年42歳で、17年間タクシーを運転してきた上海大衆タクシーの臧勤さんは3月17日午後3時、マイクロソフト中国を訪れて1時間近く講演した。講演中8回もの熱烈な拍手を受けた。

この話題をメールで読んだ日系部品メーカーの日本人幹部はどこまで理解してくれただろうか。それだけではない。駅前でいつ来るかも分からない客を待ち続ける東京のタクシー運転手にも読んでもらいたい。このスーパー運転手を講師に呼ぶべきなのは、日本のタクシー会社ではないだろうか。

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本文で採り上げたブログの内容(中国語)

莫 邦富(モー・バンフ)

1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。

「蛇頭」、「中国全省を読む地図」、翻訳書「ノーと言える中国」がベストセラーとなり、話題作には「日本企業がなぜ中国に敗れるのか」、「これは私が愛した日本なのか」、「新華僑」などがある。

最新刊に「mo@china 莫邦富・中国レポート」、「中国の心をつかんだ企業戦略」。現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。

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