結局、商標局は8月10日に受理したこの異議申し立てを認め、わずか8日後の8月18日付けで、日本の企業に対して「三光」の商標登録申請を却下する旨の通知を発した。「民衆に対する不健全な政治的影響がある」という説明があったという。
この「三光事件」に対しては日本でも、「中国で商売をしようと思うなら、それぐらいのことは勉強しておくべきだ」、あるいは「日本の企業を標的にした非常に偏った政治判断であり、中国当局はけしからん」など、様々な論調で論議された。
「異議申し立て」の審議期間
商標局の「不健全な政治的影響がある」という説明は分からなくもない。仮に米国企業が日本で「リトル・ボーイ」(注:広島に投下された原子爆弾のコードネーム)というブランドのドリンク剤を販売するとしたら、と想像してみると分かりやすい。少なくとも広島では売れないだろうし、不買運動さえ起きかねない。
日本企業の「三光」ブランド製品が中国で販売されたとしても、これと同じで、ビジネス上は大失敗に終わる可能性が高かっただろう。したがってこの日本企業は、申請が却下されたことによって、大損失を未然に防ぐことができたという見方も成り立つ。
しかしながら、ここで指摘したいのは、商標局の判断に対する是非に関する事柄ではない(議論としては関心を集めるとしても、結局は不毛なまま終始するに違いない)。それよりも、異議申し立てが受理された後の審議に費やされる時間だ。思い出していただきたい。
「青森事件」において審議に費やされている時間はすでに3年以上、厳密にいえば1150日以上にもなる。これに対して「三光事件」のそれは、上述のとおり、わずか8日間にすぎない。「中華人民共和国商標法」という同じ法に基づいた同じ「異議申し立て」手続きに対する審議であるにも関わらず、「1150日(以上)」対「8日」という大きな差がでるのはなぜか、ということだ。
審議期間にこれほど大きな差が生じるという事態が明らかになった以上、いわゆる「異議申し立て」の意義はどこにあるのだろうかという疑問を呈さざるを得ない。それこそ「異議申し立て期間の差異に関する新たな『異議申し立て』」がなされて然るべきではないだろうか。少なくとも青森県とその関係者には、そうするだけの権利があるはずだ。ビジネスにとって「時間」は「コスト」であり、考慮すべき最大の要素だ。それを忘れて商標局の判断を云々しているばかりでは、問題を矮小化することになりかねない。
法というものはビジネスを含む社会生活を行う上の羅針盤だといえようが、運用の幅が大きければ大きいほど、存在意義は軽くなる。これほど恣意的な運用がまかり通るような事態は早急に改善されなければならない。そうすることは中国自身の「知財」保護政策にとって、具体的な事案に関する「政治的な影響」を勘案することよりも、はるかに大きな意義があるはずだ。(サーチナ総合研究所 森山 史也)
この記事の著作権は「中国情報局」を運営している株式会社サーチナにあります。
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