商標登録の異議申し立てをめぐる二つの「事件」
ニセブランド品や海賊版など、知的所有権を侵害したモノが中国にあふれかえっていることは世界中に知れ渡っているが、03年の「青森事件」はそんな中国のイメージをさらに悪化させたといえる。
しかしこの「事件」をそんな文脈で捉えるのは間違いだ。これはむしろ日本側の問題であって、私たちの知的財産権に対する意識の低さが浮き彫りにされた事例として教訓的に受けとめるべきだろう。
いわゆる「青森事件」とは
「事件」の概略はこうだ。
広東省広州市のデザイン会社が果物や野菜、花卉(かき)などの商品に使用するとして、「青森」の商標登録を申請している旨が03年4月28日付の中国の官報に告示された。
中国の商標法によれば、告示日から3カ月以内に異議申し立てが行われなければ登録商標として認可される。つまり同年7月28日までにどこからも異議申し立てがなされないかぎり、「青森」ブランドの商標権は広州のデザイン会社に帰属することになる。もしそうなれば、日本から中国の市場に「青森」や「青森産」と表示した産品を輸出した場合、輸出者は商標権の侵害で訴訟を起こされかねないことになる。
ところが青森県側がこの情報に接したのは、告示から1カ月以上経過した6月の初旬だった。とんでもないというわけで、青森県側は事実関係の把握と異議申し立ての準備に奔走した。異議の主旨は、「青森」は世界有数のりんご産地として熟知された著名な地理表示であり、広く知られた外国の地名は商標に使えないという中国商標法の規定に触れる。したがってデザイン会社の申請には撤回を求めたい、というものだった。
申立書は青森県、青森市、農林水産関係団体の連名で用意され、弁護士事務所を通じて中国の商標局に提出された。商標局がこれを受理したのは、なんと、期限ギリギリの7月25日というきわどさだった。
「事件」のポイントとその後
しかし事件のポイントは、そんな青森側の「プロジェクトX(エックス)」的ストーリーにあるのではない。私たちが目を向けるべきはむしろ「事件」発生以前、世界有数のリンゴ産地「青森」のブランド力を充分認識しながら輸出する当事者が、あろうことか、第三者による商標登録申請を許してしまっていたというワキの甘さに対してだ。
「事件」が示唆しているのは、中国への進出や産品の輸出に際して早い段階で知的財産権の保護対策を講じておくことがいかに重要かということだ。私たち日本人はお世辞にもリーガルマインドが高いとはいえない。だからこのときの青森のように、問題が顕在化してはじめて行動を起こすのがつねだ。しかし侵害を未然に防ぐ手立てを採らずして、知的財産権を保護することはできない。
next: そのことを思い知らせてくれたのがこの事件だった…
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