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「世界で仕事をするということ」/グロ・ブルントラント著

2005年2月14日

(経済ジャーナリスト=小林 佳代)

ノルウェー初の女性首相の回想録。女性がまだ少数派である政治の世界や国際舞台で、困難を乗り越えながらいかに問題を解決してきたかを振り返る。

医師として母子の保健問題にかかわっていた著者の転機は、35歳のとき、環境大臣に抜擢されたことだ。以後、保健と環境は密接な関係があると認識し、環境問題に積極的に取り組むようになる。

環境大臣になって2年半後の1977年、北海沖油田から原油が流出する事故が起きる。著者は、内外の記者に積極的に情報を開示しながら、現場近くで直接指揮を執り、流出を早期に停止させ、環境被害を最小限に食い止めた。

こうした環境大臣としての仕事ぶりが評価され、81年、歴代で最も若い41歳で首相に就任する。83年には、国連事務総長からの要請で、新しく設立される環境と開発に関する世界委員会委員長にも就任。精力的に活動し、指導力を発揮しながら、87年、「我ら共有の未来」と題した報告書をまとめ上げる。

報告書は環境・資源基盤を保全しつつ開発を進める「持続可能な開発」を提唱した画期的なものだった。現在、環境問題を論じる際に必ず出てくる「持続可能な開発」という概念を打ち出した点で、この報告書の意義は極めて大きい。

「持続可能な開発」の概念打ち出す

さらに、委員会の活動と報告書の内容がきっかけとなって、92年、リオデジャネイロで「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」が開催された。世界は地球環境問題の解決に向けて急速に動き出した。著者が環境分野で果たした役割が非常に大きいことを認識させられる。

首相を退いた後も、世界保健機関(WHO)初の女性事務局長として疫病撲滅、たばこ消費抑制などに取り組んだ。

どんな立場にあっても、明るく、前向きに、エネルギッシュに物事に取り組む著者の姿勢は印象的だ。陰の駆け引きで首相就任を阻止しようとした先輩議員を大声でしかりつけたり、カソリック教徒の前で避妊と出産コントロールの重要性を訴えたりと、揺るぎない信念に基づいた毅然とした態度には非常に好感が持てる。

首相在任中、第4子がうつ病で自殺する不幸に見舞われるなど、著者が歩んだ道のりは、公私ともども決して平たんではなかった。それだけに様々な苦難を越えて挙げた功績の大きさに感服させられる。

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書名:世界で仕事をするということ
著者:グロ・ブルントラント
出版:PHP研究所/価格1680円(本体1600円)
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◎この記事は日経エコロジー2005年3月号に掲載されたものです。

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