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凶悪犯を否認から自白へ “落としのプロ”のワザ

2006年2月7日

(日経ビジネスAssocie編集)

どう犯人を落としたか。どんな凶悪犯でも「罪を憎んで人を憎まず」の精神で取り調べました。

竹久 昭一(たけひさ・しょういち)氏
1928年、岡山県生まれ。43年東京陸軍少年飛行兵学校入校。45年8月、栃木県黒磯市の特別攻撃隊基地那須野飛行場で終戦復員。51年4月、岡山県警察官を拝命。54年4月、捜査係刑事に。66年8月、岡山県警察本部捜査第二課暴力班係主任。75年4月、捜査第一課強行班第一係長。87年4月、課長補佐。89年3月退職。“落としのプロ”として名をはせた。著書に『地底の叫び』(近代文芸社)がある。

岡山県警に勤めた38年のうち、刑事として35年間、殺人、強盗、放火、強姦などの凶悪犯を相手にしてきました。手がけた凶悪事件は134件。うち114件を検挙し、「殺しの竹さん」とあだ名をつけられました。殺人犯をよく自白させたからです。

では、どう犯人を落としたか。まず、どんな凶悪犯でも「罪を憎んで人を憎まず」の精神で取り調べることを心がけていました。人として扱い、きちんとした会話をしなければ自白などおぼつかないからです。私は被疑者を決して呼び捨てにせず、「きみ」とか「〜君」と呼んでいました。

被疑者は最初、必ず「自分はやっていない」と否認します。時には取調室の机を叩いたりひっくり返したりして、大暴れすることもあります。でも、それは罪を犯しているからなのです。そんなときは止めてもムダ。好きなだけ暴れさせ、落ち着いてから取り調べます。

テレビの刑事ドラマなどでよく「故郷のお袋さんに申し訳ないと思わないのか」とか「小さな子供がいるんだろう」といったシーンがありますね。でも私はあれはやりません。家族に心配させたくないがために、被疑者は否認するからです。かえって意固地にしてしまいかねません。そんなに甘いものではないのです。

取り調べは1日10時間以上に及ぶこともあります。「今日は自白しそうにないな」と感じたときには、まったく関係ない話をします。政治家、盆栽…。何でもいいんです。若い刑事は「何でこんな関係ない話をするのか」と不思議がりますが、被疑者は様々な話をしているうちに自分の人生について考える。それがきっかけとなることが少なくないんです。

取り調べでは甘い言葉はかけません。「人を殺したなら死刑を覚悟して話しなさい」とまで言います。そして「これは君とワシの戦争だ。ワシは戦場に行ったこともある。絶対に負けんぞ」と告げます。こちらの覚悟、人間性を被疑者に悟らせるのです。「この刑事には勝てない」と思わせられれば、必ず自白させることができます。凶悪犯といえども人間です。最後は人間力の勝負になるのです。

「上手なウソのつき方 教えます」は今回が最終回です。

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※この記事は、日経ビジネスAssocie 2004年2月17日号に掲載した記事を元に再編集したものです。

 

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