「ハードワーク」は時代遅れじゃない!
(日経ビジネスAssocie編集)
「量より質」、「最小の力で最大の成果を」。最近のビジネスノウハウ本は「効率」、「要領」を重視する内容が多い。このコラムでは、その風潮に真っ向から反対する。量より質と言っても、量をこなすことでしか質を高めることはできないからだ。もちろん、会社に滅私奉公して資本家の走狗となるような働き方は避けたい。会社のためでなく、自分のために、「新・ハードワーカー」を宣言しよう。
「量」が「質」を決める!
元旦の午前中を除き年中無休。毎朝6時50分に、社内の誰よりも早く出社し、夜は10時頃まで働き続ける。数多くの企業を再建してきた日本電産の永守重信社長は筋金入りのハードワーカーとして知られる。その永守社長が会社立て直しに際して、社員に求めることの一つに「月100件以上の顧客訪問」がある。
営業担当者が顧客訪問の回数を倍にすれば、売り上げも倍増するか。もちろん、答えは否だ。だが、永守社長は「これは精神論ではなく、確率論だ」と言う。訪問数が倍になれば、顧客から聞き出せる情報の量と質は充実し、ビジネスチャンスは間違いなく増える。すぐに売り上げ倍増とはならなくても、確実に実績は上がり、それが営業担当者の自信と経験値の向上につながり、好循環が始まる。
成果=量×質だとすれば、仕事は量も質も大事というのが教科書的な答えだろう。あるいは、個人の業務知識やスキルの市場価値を重視する昨今の風潮からいけば、他を寄せつけないだけの質こそが大事という主張が説得力を持つかもしれない。だが、実のところ質は量によってしか担保されない。
当たり前だが、どんなに有能なビジネスパーソンも初めは仕事の素人にすぎない。それが「一人前」になるには、まず目の前の仕事を通じて経験を積むしかない。経験の量が質を向上させ、それによってより高度な仕事に向き合えるようになる。そして、そこでも、より高度で複雑になった仕事の量をこなすことでしか、新しい知識とスキルは身につかない。量こそが、質を決定する。
第一人者になっても原稿料を意図的に抑え、多くの雑誌から執筆依頼が来るようにして、常に問題作を世に問い続けた手塚治虫。平均すると日に2〜3作を仕上げ、様々な実験的手法に挑み独自の作品世界を作り上げたピカソ。いわゆる天才たちがおしなべて多作である事実も、量が質を決定する一つの証左と言えるだろう。
「最小の努力で最大の成果を」。ビジネスの第一線で試行錯誤していれば、こうしたうたい文句に嘘臭さを感じないはずはない。遮二無二働くことは格好悪くない。いや、そうでしか質は生まれない。
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