「ヤトロファ」

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

イラスト:小林商事

ヤトロファという樹木が注目されている。種に油分を豊富に含んでいるため、バイオディーゼル(バイオ燃料の1つ)の原料として有用なのだ。しかも非食用で痩せた土地でも簡単に栽培できるため、穀物との競合や森林伐採などが起こりにくい利点もある。国内外でヤトロファ栽培に取り組む動きも盛んになっている。

温暖化対策や石油依存脱却などの観点で、近年バイオ燃料の存在感が増している。植物由来の燃料であるため、成長時に二酸化炭素を吸収するうえ、再生産が可能だからだ。現在までに米国を中心にバイオエタノール(原料はトウモロコシやサトウキビなど)が普及。また欧州を中心にバイオディーゼル(原料はヤシや菜種など)も普及しつつある。米グリーンエッジ社の予測によると、バイオ燃料の市場規模は2015年までに525億ドルに達する見込みだ。

ところがバイオ燃料が普及したため、副作用として穀物価格が高騰してしまった。食糧と燃料の双方から穀物の奪い合いが起こったからだ。米国ではバイオ燃料の拡大策を実施。現在トウモロコシ収穫量の4分の1を燃料用に回している。これは同国からのトウモロコシ輸出量を上回っている。世界銀行のあるエコノミストは、世界の食糧価格上昇幅140%(2002年〜2008年)のうち75ポイントが「バイオ燃料による影響」だと非公式に推計している。世界各地では食糧難による暴動なども起こっている。

そこで注目されるのが南米原産の樹木ヤトロファだ。日本では観葉植物として普及している。和名はタイワンアブラギリ(台湾油桐)またはナンヨウアブラギリ(南洋油桐)。ヤトロファ(ジャトロファ)の通称は、学名のjatropha curcus(ヤトロファクルカス)に由来する。

ヤトロファの種はバイオディーゼルの原料にできる。600ミリグラム程度の種子1つから30〜40%程度の油が採れるのだ。古くから石鹸やロウソクの原料になったほか、第二次世界大戦中は旧日本軍がインドネシアにおいて「燃料利用を睨んだ栽培計画」も立てていたという。

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