問題が明らかになったきっかけは、一色うなぎ漁業組合による不祥事だった。同組合は台湾から里帰りウナギ72トンを逆輸入。その際、外国産ウナギの混入に「気付かないまま」一色産として販売してしまった。報道によれば、育成先へ渡った18万匹のクロコが、逆輸入時には26万匹のウナギに化けていたという(参考:毎日新聞2007年7月19日)。

これを受け農林水産省は6月18日に、関連団体と都道府県に対して「原産地表記を適正化するよう」求める文書を出している。また自民党からはJAS法の改正などを検討する動きも出てきた。そして日本鰻輸入協会では、里帰りウナギを「輸入」扱いとすることを決定。さらに一色うなぎ漁業組合では、里帰りウナギを取り扱わないことを決めている。

一方、台湾の養鰻業界はこれを好機と捉えている。国内産として流通していたウナギの一部が、実は台湾産であることが明らかになったためだ。国内の養鰻関係者の間には、各地域におけるウナギの味に大きな差がないと見ている人もいる。今月18日には、台湾の養鰻業者が東京で記者会見を実施。台湾産ウナギの安全性を訴えた。

実は今回紹介した里帰り問題以外にも、養鰻業界が直面する課題は多い。例えば今年は水産物輸入販売会社「魚秀」などによる、ウナギ産地の偽装事件も明らかになった。またEU(欧州連合)と台湾は、資源保護を目的として、幼魚であるシラスウナギの輸出規制も始めた。これは日本の養鰻業界に間接的・直接的な影響を与える。このような状況が続くと、輸入ウナギの激減、国産ウナギの高騰、消費者のウナギ離れという結果も招きかねない。

そもそもこのような問題の根源にあるのは、日本人がウナギに対して抱いている国産志向だろう。「国内産だから品質が良い」「海外産だから品質が悪い」などと単純に考えるのではなく、ウナギやブランドの品質を是々非々で判断するのが本来的な姿だろう。養鰻業界に求められているのは、その判断を消費者に委ねるための環境作りではないだろうか?

もり・ひろし

新語ウォッチャー。1968年、鳥取県出身。電気通信大学を卒業後、CSK総合研究所で商品企画などを担当。1998年からフリーライターに。現在は新語・流行語を専門とした執筆活動を展開中。辞書サイト・新聞・メルマガなどで、新語を紹介する記事を執筆している。NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)理事。

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