第3の要因は「地政学的リスク」だ。それも過去2度の危機と異なり、中東以外の地域(アフリカや中南米など)にもリスクが拡大している。例えばアフリカのナイジェリアでは、武装勢力による石油関連施設への攻撃が続いている。またこれに関連して「資源ナショナリズム」の台頭も見逃せない要因となっている。自国の資源開発から民間資本や外資を排除したり、外資に対して増税を行うなどの動きがあるのだ。例えばロシアでは2004年以降、民間石油会社の再国営化が進んだ。
そして最後の要因として「投資・投機資金の流入」を挙げておかねばならないだろう。特に昨年はサブプライム問題で行き場を失った資金が、一気に原油先物市場に流れ込んだ。「エネルギー白書2008」の分析によれば、2007年初頭の原油先物価格1バレル80〜100ドルのうち、資金流入による影響は30〜40ドルにものぼるという。
以上を振り返ると「需要の増大」も「供給の限界」も「地政学的リスク」も中長期的な構造問題を抱えていることが分かる。唯一「投資・投機資金の流入」だけが、短期的に調整局面に入る可能性があるだけだ。これは、明らかに過去2回の石油危機とは異なる構造となっている。
国際社会も少しずつ対策に動いている。例えば今年4月にローマで開催された国際エネルギーフォーラムは「原油高騰への懸念」などの内容を盛り込んだ議長総括を発表した。また世界最大の産油国であるサウジアラビアは、6月22日に1日あたり20万バレルの増産を発表している。洞爺湖サミットでも、原油高騰問題が議題の1つになる。
フランスのラガルド経済財務雇用相は、現在の国際社会が抱える危機を「3つのF」で表現している。金融(finance)、燃料(fuel)、食料(food)という3つの危機だ。これらの問題は互いに複雑に絡み合っており、その解決が困難だ。燃料(石油)の問題を軸足にしただけでも、需給のコントロール、代替エネルギーの開発、投資の透明性確保、政情不安の解消など数多くの課題を解決しなければならない。今回の石油危機では「中長期戦の覚悟」が必要となりそうだ。
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