2000年代に入ると、冒頭でも紹介したパワーハラスメント(パワハラ)も登場した。これは、上司が部下に対して職権などを盾にして行う嫌がらせを指す。具体的には「暗に退職を勧める目的で、無意味な研修を受けさせる」「業務上の連絡をわざと知らせない」「無能と決め付け評価しない」などの行為がある。この概念では、企業において職権が濫用されがちである問題が浮き彫りになった。また以前にも増して、男性社員の被害が注目されたことも意義深かったと言える。
また同じく2000年代には、ドクターハラスメント(ドクハラ)も登場している。これは、医療従事者が患者に対して行う嫌がらせを指す。具体的には「医師が患者に心ない一言を言ってしまう」とか「セカンドオピニオンを拒む」などの事例がある。この概念では患者の生活の質(QOL)を重視する時代の流れに、医療界が十分についていけない問題が浮き彫りになった。
ほかにもハラスメント概念は数多く存在する。例えばスモークハラスメント(非喫煙者が受動喫煙を通じて受ける苦痛)、ブラッドタイプハラスメント(血液型を理由とした嫌がらせ)などの言葉がある。ネット界では、ラブハラスメント(恋愛至上社会が恋愛弱者に対して与える精神的苦痛)という言葉も登場した。
このようにハラスメント概念は現在でも拡大を続けている。これは様々な分野で「嫌がらせ」が発生していることを示している。そしてその被害の原因には、硬直した価値観が巣くっていることも多い。「こんなことが嫌がらせになるはずがない」「自分の立場ならこれをやっても大丈夫だろう」「こんなことをしても公には問題にならないだろう」といった価値観だ。このような価値観は、相手に対する想像力の欠如が生み出しているとも言える。今後もハラスメント概念は、想像力の欠如を照らすための重要なツールになりそうだ。
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