その最たる事例は、携帯電話の市場だろう。

日本の携帯電話は黎明期から「特殊進化」の道を歩んだ。まず第1世代(アナログ方式)ではHiCAPと呼ばれる独自仕様を採用。第2世代(以後デジタル方式)でもPDCと呼ばれる仕様を採用して、国際標準化を図ったがかなわなかった。そこで2000年代に入ってからは、各社が第3世代で国際標準(W-CDMAなど)を採用した。ところが現状、この国際標準は新しすぎるため、世界での普及率が低い状態にある。

もっとも日本市場の特殊性は、キャリア(携帯電話事業者)やメーカーにとって深刻な問題ではなかった。日本市場に発展の余地があったからだ。事実、今から約10年前の1998年4月時点で、携帯電話の契約数は約3200万台に過ぎなかった。その後、カメラ、音楽再生、電子マネー、ワンセグなどの独自機能が続々と登場。2008年4月の契約件数は約1億300万台に至っている(電気通信事業者協会調べ)。

ところが世界市場では別の状況が進んでいた。まず世界の多くの地域では、現在でも第2世代の規格であるGSMが一般的である。また端末も、過剰な機能を持たないものが多い。しかもSIMと呼ばれるカードさえ持っていれば、異なるメーカーの端末を自由に取り替えることもできる。日本ではこの使用方法が許されていない。

この状況が、国内企業にとって徐々に「危機」となりはじめている。世界市場での競争力が育たないばかりか、何らかのきっかけで日本市場を失う可能性すら秘めているからだ。

日本企業が競争力を持てない様子は、世界市場のシェアを見れば分かる。例えば2007年における出荷台数シェアは、1位のノキア(フィンランド)が38.8%、2位のサムスン(韓国)が14.3%、3位のモトローラ(米国)が14.1%となっている(ストラテジー・アナリスティック調べ)。上位3社の中に、日本企業の名前はない。

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