「着地型旅行」

2008年3月18日

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

イラスト:小林商事

地元の事は地元の人に聞くのがいちばん。旅先で穴場を探すようなときに、この言葉を思い出す人もいることだろう。最近、政府や観光業界などは、目的地に所在する旅行業者が企画するパック旅行(募集型企画旅行)である「着地型旅行」の推進に乗り出している。地元の事を良く知る地元の業者であれば、それだけ面白いパック旅行を企画できるのではないか、という理屈だ。

着地型旅行という形態は、既存の形態である「発地型旅行」と比較すると分かりやすい。

発地型旅行とは、出発地に所在する旅行業者が企画するパック旅行のことを指す。ここでいう出発地とは、おおよそ都市部のことだと思っていい。都市部にある旅行会社は、その販売規模を生かして、交通機関や宿泊先などを一括で安く仕入れることができる。だがその分、旅行企画が型にはまりやすい弱点も持っている。

いっぽう、着地型旅行とは、旅の目的地(到着地)に所在する旅行業者が企画するパック旅行を指す(形としては、目的地に発着する「オプショナルツアー」となる)。地元の旅行業者は地元の情報に詳しいので、独自性の高い企画を提案できるわけだ。

もちろん企画内容は多岐に渡る。例えば地場産業の現場や遺産を巡るパック旅行もあれば、地元農家などに宿泊して地域文化を体験するパック旅行もある。テレビドラマや映画のロケ地を巡ったり、地元の人しか知らないような珍味を食べに行ったり、その地域でしかできない珍しいスポーツを楽しんだりする。いずれも、地元ならではの情報収集力と企画力がものをいう内容だ。

なぜ、観光業界は、ここにきて着地型旅行に注目するようになったのか。

1つ目の理由は、旅行者のニーズが細分化している点にある。まず近年では旅行者が団体行動を避ける傾向があることから、一緒に旅行するグループの構成人数が少なくなっている。その上旅慣れた人が増えたので、旅の目的も「より明確に」「より深く」なっている。特に団塊の世代では、そのような傾向が強いと言われる。いわゆる“団塊マネー”(該当世代の個人金融資産)の総計は約130兆円(第一生命経済研究所の推計)。着地型旅行の潜在的ニーズとマーケットは大きいのだ。

もう1つの理由は、地域振興との結びつきが期待できる点だ。例えば格安のバス旅行など、従来型の発地型旅行では地元の利益が少ない。いっぽう着地型旅行の場合は、地元の旅行業者や関連業者(宿泊業者など)が利益を確保できる。また観光資源を発掘すること自体が、街づくりへの支援になる。これに関して日本商工会議所は、2004年に「街づくりの観点に立った観光振興」を政府などに提言している。

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