ザ・リッツ・カールトンの従業員はクレドを常に携行
2つ目の企業は、世界63カ所で高級ホテルを経営するザ・リッツ・カールトンだ。同社の場合は『ゴールドスタンダード』と題するクレドを経営の中核に据えている。こちらも日本語で1200文字程度の文章にすぎない。従業員はこれを記した名刺大カード(8面4つ折り)を常に携行。日常業務の中でこれを参照している。
『ゴールドスタンダード』が定めているのは6項目の指針だ。第1項目では、同社の使命として「心のこもったおもてなし」を宣言。第2項目の『モットー』では、「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」という基本姿勢を宣言する。そして残り4項目で『サービスの3ステップ』『従業員への約束』などの具体的行動指針を記している。
クレドは「簡潔」で「具体的」な「指針」
日本でクレドが注目されたきっかけは、2007年3月の、ザ・リッツ・カールトン東京の開業だった。マスコミが開業を伝える際、従業員が携行するクレドの存在に注目したのだ。同じ時期に、クレドの効用を説く書籍も相次いで登場した。最近では国内でクレドを導入する企業も増えている。
ところでクレドは、経営理念やマニュアルの類(たぐい)と何が違うのだろうか。
第1にクレドは、守るべき指針を「簡潔かつ具体的に」記している。この点が、抽象的になりがちな経営理念と異なる。例えばJ&Jの場合、21項目の具体的な行動指針を示している(顧客志向、品質管理、労働管理、法令遵守、社会貢献など)。これらは、企業経営にかかわるおよそすべての項目を網羅する。
第2に、クレドは「指針」にすぎない。従業員は指針に基づき具体的行動を考えなければならない。この点が、行動そのものを規定するマニュアルと異なる。具体的行動を考えることが、従業員の自主性やモチベーションを引き出し、ひいては従業員としての誇りを形作ることになる。
第3にクレドは「普遍性と柔軟性」を併せ持っている。クレドの基本的指針は不変だが、具体的指針は時代によって変化するのだ。例えばリッツ・カールトンでは、以前20項目あった具体的指針を、よりシンプルな12項目の指針に改訂している。しかも具体的指針を変える際、その改定プロセスに従業員が深く関与できる。
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