「官製不況」

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

国内の住宅着工数が昨夏から激減している。これがGDP(国内総生産)を押し下げる主要因の一つになっているのだ。この現象の背景には、改正建築基準法の施行に伴う規制強化が関係しているという。官による法運用の厳格化や混乱などが、昨夏以降の建築不況を生み出しているというのだ(関連記事)。

耐震偽装の再発を防ぐ法改正が、住宅着工数を激減させた

イラスト:小林商事

そもそものきっかけは耐震偽装問題だった。この問題に対処する目的で、政府は建築基準法を改正し、2007年6月に施行した。「一定条件の建物を建築する際、構造計算の二重チェックを行う」などの新規定を盛り込んだ。ところが、この制度変更が、審査日数の長期化という副作用を生み、住宅着工数が激減してしまった。

住宅着工数の激減ぶりは、国土交通省の統計情報で確認できる。同省が今年1月31日に発表した「建築着工統計調査報告」によると、2007年の住宅着工数は約106万戸。前年比で17.8%も減ってしまった。この下落幅はバブル崩壊直後の1991年に匹敵する数字だ。また月別着工数(前年同月比)では、9月に44.0%減という壊滅的な数字を残している。この数字は、12月には19.2%減まで回復したが、現在も減少傾向が続いているとみられる。

関連業界にも悪影響を与えた。例えば住宅大手のうち住友林業や旭化成ホームズなどは、2007年9月の中間決算において減益を発表した。また分譲会社や中小の建築会社の中には、倒産に追い込まれたところも出ている。セメント・鉄鋼・木材などの建材メーカーにも悪影響が及んだほか、日雇い労働者の求人数が激減する事態も発生している。

政府もようやくこれを問題視し始めた。サブプライムローン問題や原油高騰問題と共に、建築不況がGDPを押し下げる要因になっているためだ。2008年1月18日に政府が閣議決定した経済見通しでは「我が国経済は(中略)改正建築基準法施行の影響により住宅建設が減少していること等から、回復の足取りが緩やかになる」との認識を示している。ちなみに建築業界の市場規模はGDPの約10%に相当する。

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