「アポ電」

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

アポ電と言えば、かつては「電話による営業活動」を指す業界用語だった。しかし現在は、新しい意味が加わっている。それは「オレオレ詐欺の新手法」という意味だ。加害者が被害者に対して事前に電話連絡をし、自分を身内だと勘違いさせ、その数時間後あるいは数日後にオレオレ詐欺を働く。一度連絡を入れて時間を置くことで、被害者はその状況を深く信じ込んでしまう。

オレオレ詐欺の新手法

イラスト:小林商事

まずオレオレ詐欺について簡単に復習したい。オレオレ詐欺とは、金を振り込むよう被害者を誘導する「振り込め詐欺」の一種だ。加害者は身内を装って被害者に電話をかけ、何らかのトラブルに巻き込まれたふりをする。そして、トラブルを解決するためのお金を要求する。被害者の多くは高齢者だ。最近は子供と離れて生活する高齢者が多いので、このような詐欺が成立しやすい状況がある。

だがこの詐欺手法は、時間と共に陳腐化している。オレオレ詐欺が登場したのは遅くとも2003年ごろのこと。以来、警察やマスコミによる啓蒙が進み、市民も警戒するようになった。警察庁による認知件数(未達含む)を見ると、最盛期の2004年には1万4874件あったが、2005年には6854件に低下している。

そこで犯罪集団は、オレオレ詐欺に次々と新しいテクニックを投入している。中でも最近最も目立っているのが「アポ電」と呼ばれる手法だ。

最初の電話は事前連絡

アポ電の最大の特徴は、加害者が被害者に対して2度電話をかける点にある。このうち最初の電話が事前連絡にとどまることから、アポイント(本来は「面会の約束」の意)の名前を持つ。

1度目の電話で加害者は、「自分が身内である」ことを被害者に信じこませるよう注力する。例えば「今度遊びに行くからね」、「ところで最近電話機を買い換えたんだ」、「そっちの電話機の登録を変えておいてね」などと言いくるめる。そして加害者は、ここでいったん電話を切る。そのまま数時間から数日間は何もしない。

そして2度目の電話で、いよいよオレオレ詐欺を働く。例えば加害者は「会社の金を使い込んでしまった」などと演じる。また別の仲間も電話かけ「私は上司だが、今なら内々に処理できる」などと言う。このようにして最終的には振り込みを要求するのだ。この辺りの手法は、従来的なオレオレ詐欺と変わらない。だが、被害者は電話の主が身内であることを信じているので、まんまと騙されてしまうのだ。

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