増え続けるに“難民予備軍”

高層難民は、現代のビル事情が生み出した新型の地震被害と言える。そもそも日本の高層ビルは、1968年に霞ヶ関ビル(147メートル)が竣工して以来、一度も大きな被害に遭っていない。1995年には阪神淡路大震災が起こったが、直下型地震(短周期地震動)であったため高層ビルへの被害は少なくて済んだ。いっぽう将来予想される東海地震では、東京・名古屋・大阪などの大都市で長周期地震動が起こる可能性がある。長周期地震動に弱い高層ビルでは被害が甚大となり、大量の高層難民が発生する事態が想定される。

高層マンションの棟数は増加の一途をたどっている。不動産経済研究所が今年4月に発表した調査結果によると、今年以降に完成する予定の超高層マンション(20階建て以上)は、全国で522棟(16万3442戸)だという。うち首都圏は330棟、近畿圏は110棟。潜在的な難民の数は増え続けているのだ。

5階ごとに備蓄倉庫を設ける

そこで高層難民問題に取り組む、様々なアプローチが登場している。

まずエレベーターそのものの耐震性を高める動きがある。日本エレベータ協会は、千葉県北西部地震を契機に耐震基準の見直しを行った。また電機メーカー各社は、エレベーターの自動復旧システムや遠隔管理システムの開発・強化を進めている。これらが普及すれば、保安要員が現場に向かうことなく、エレベーターの復旧作業を行えるようになる。

行政による取り組みもある。東京都は今年9月、日本エレベータ協会を災害対策基本法に基づく指定地方公共機関に指定した。これにより同協会は鉄道や水道などの事業者と同様に、災害復旧に対する法的責任を負うことになった。また高層マンションが集積する東京都中央区では、昨年7月に改正版の市街地開発事業指導要綱を施行。10階建てで25戸以上のマンションを新設する場合、5階ごとに備蓄倉庫(食料や水などを保管する倉庫)を設置することを義務づけた。これにより、高層難民化した住民がライフラインの復活を待ちながら生活を送ることが可能になる。

もしあなたが高層マンションの住民なら「階段を上り下りしなくても、1週間は生活できる」ように準備しておきたい。具体的には、水・食料・カセットコンロなどの備蓄を日ごろから欠かさないようにすることだ。この機会に、身の回りの防災対策を見直してみるのはいかがだろうか。

(本稿の執筆にあたり、防災・危機管理ジャーナリスト渡辺実氏の著書『高層難民』[新潮社・2007年4月20日]などを参考にした)

もり・ひろし

新語ウォッチャー。1968年、鳥取県出身。電気通信大学を卒業後、CSK総合研究所で商品企画などを担当。1998年からフリーライターに。現在は新語・流行語を専門とした執筆活動を展開中。辞書サイト・新聞・メルマガなどで、新語を紹介する記事を執筆している。NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)理事。

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