認知件数1934件のうち検挙はわずか3件

このような手法の蔓延(まんえん)について、今年1月に実施された「本人確認法施行令の改正」との関連を指摘する声もある。同改正は、マネーロンダリング防止のため「ATMにおける10万円超の現金振込」を基本的に禁じた。産経新聞(8月15日)によると、この影響でオレオレ詐欺にける現金授受方法が「現金振込から口座振替」に変化したという。「被害者自身がATMを操作する」という詐欺手法は、このような背景から発達したものと思われる。

還付金詐欺への対策は遅々として進んでいない。前述の警察庁統計によれば、昨年6月から今年9月までの還付金詐欺の認知件数は1934件(うち振込発生分は1866件)であるのに対し、検挙件数は11件(検挙者ベースではわずか3人)にすぎない。この間の被害総額は実に約20億円にものぼる。

そこで警察や銀行などの関連機関は、還付金詐欺への対応に乗り出している。警察庁は、振り込め詐欺の類型に還付金詐欺を追加したうえで、その対応を強化する。また銀行・地方自治体・税務署・社会保険事務所の中には、ビラやWebページなどを通じて「ATM経由での還付金手続きはない」と告知するところもある。

まずは、慌てないこと、事実を確認すること

いっぽう一般市民ができる対策もある。本稿をネット上で閲覧できるような人であれば、このような詐欺手法に引っかかることは少ないだろう。そこで、身近な高齢者の方(自身のご両親など)に次のようにアドバイスしてほしい。もしも怪しい連絡を受けたら、まず「慌てないこと」「すぐにお金を振り込まないこと」「事実を確かめること」に十分に注意するのだ。

まず「慌てない」ためには、身近な誰かに連絡を取るのも一つの方法だ。加害者の中には段取りを急かす人もいるが、それには乗らない。また「事実を確かめる」ためには、税務署・社会保険事務所・役所などの該当機関に直接問い合わせるとよい。その際、電話番号は必ず「電話帳や番号案内」などで調べるようにする。もちろん詐欺であることが分かったら、警察への連絡も忘れないようにしたい。

高齢者の中には、年金の記録漏れ問題の影響で、年金の支払いについて不安感を抱いている人も多い。加害者の中には「この還付に応じなければ、年金が無効になる可能性もある」などと煽る者もいるという。還付金詐欺の横行は、高齢者の不安を映しだす鏡であるのかもしれない。

もり・ひろし

新語ウォッチャー。1968年、鳥取県出身。電気通信大学を卒業後、CSK総合研究所で商品企画などを担当。1998年からフリーライターに。現在は新語・流行語を専門とした執筆活動を展開中。辞書サイト・新聞・メルマガなどで、新語を紹介する記事を執筆している。NPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)理事。

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