寄付にも、実効性を問う
この状況を背景に、リッチスタン的な新しいライフスタイルも出現した。例えば旧富裕層は仕事に執着がなかったが、リッチスタン人は仕事を好む。また旧富裕層は表向きは倹約家を「装う」傾向があるが、リッチスタン人は誇示的消費を好む。例えば米国内の自家用ジェット機の売り上げは、1995年は33億ドルだったが、2005年は130億ドルに伸びているという(参考:ザ・ニューリッチ)。これはリッチスタン人の消費性向が影響した。
またリッチスタン人の「社会とのかかわり方」も独特だ。例えば慈善活動の分野では、旧富裕層が寄付の規模に注目したのに対し、リッチスタン人は寄付の使われ方を気にする。つまり自分の寄付が、実効性を持つかどうかを気にするのだ。自らソーシャルアントレプレナー(社会起業家)となり、企業活動によって社会問題の解決に取り組む人もいる。
高所得でも悩みはある
高い所得を誇るリッチスタン人にも様々な悩みがある。まずリッチスタン社会の中にも格差拡大の傾向がある。米国内の所得上位1%の平均所得は1990年から2004年までに57%伸びている。このうち上位10%の平均所得は同時期に85%も伸びている(これらの所得上位層は、正確には旧富裕層と新富裕層を含む。ただし新富裕層の流入人口が圧倒的に多いことから、フランク氏はこのように記述している)。またリッチスタン経済内では激しいインフレ(新富裕層が好む消費財の物価上昇など)も起こっている。2004年のインフレ率は6%を超えており、これは全米平均の約2倍の率だった(参考:ザ・ニューリッチ)。
また子供の教育も問題だ。旧富裕層社会は独自の教育システム(帝王学など)で子供を育てたが、歴史の浅いリッチスタンではシステムが未成熟だ。リッチスタン人の間では「我が娘がパリス・ヒルトンにならないためには、どうすれば良いのか」と悩む人も多いのだという(参考:クーリエ・ジャポン2007年11月号)。さらに皮肉なことに、リッチスタン人の子供は、貧困層の子供と同様に不良行為に走る傾向もある。
新富裕層は、実は世界各地で出現している
実はこのような新富裕層は世界各地で出現している。もちろん日本も例外ではない。2005年の新語・流行語大賞では「富裕層」がベストテン入りした。2006年以降は、日本の新富裕層の実態をレポートした書籍がいくつも登場している。
その中の一つ『富裕層の財布』(三浦展著)は次のようにレポートする。日本において金融資産1億円以上の人は推計で130万人存在する。その中には、ありあまる資産を持つが多忙である「真正富裕層」、消費性向が高くハイソ志向の「新人類世代」、お洒落で文化好きな「団塊ジュニア」、多忙ながら消費性向の高い「キャリアウーマン富裕層」などの様々な層が存在するという。このような多様性は、リッチスタン社会の多様性にも通じる。
フランク氏の指摘によれば、グローバル化の進行に伴い、リッチスタンのグローバル化も進む可能性があるという。つまり世界各国の新富裕層が、自国の文化と遊離したうえで、リッチスタン人という世界市民に変貌するかもしれないのだ。もちろんその過程で、各国内での経済格差が広がる。そしてさらに、リッチスタン内での経済格差も広がる可能性すらある。リッチスタン人の行動様式は、今後の国際社会を占う際の要注目ポイントとなるかもしれない。
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