「リッチスタン」

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

新富裕層が勃興する米国社会で「リッチスタン」という概念が話題になっている。お金持ち(リッチ)の経済や社会が、米国の一般社会と異なる仮想国家・リッチスタンを形成しているというのだ。そしてリッチスタン人は、従来の富裕層とは異なる特徴を持っているという。新富裕層の出現は世界で共通する現象。リッチスタン人のライフスタイルを知ることは、日本の新富裕層のライフスタイルを把握することにもつながる。

新富裕層の1%の所得はフランスの国民所得を超える

リッチスタン(Richstan)は、米国の経済誌ウォールストリートジャーナルのロバート・フランク記者による造語。おそらくパキスタンなどの実在国家名との洒落になっている言葉だ。同氏は米国における新富裕層の実態を調査して、リッチスタンという仮想国家の存在を指摘した。その定義は「世帯あたりの純資産が最低でも100万ドル以上の人、一般的には1000万ドル以上の人の集まり」ということになる。米国内での人口比率は、それぞれ3.2%(約950万世帯)と0.7%(約200万世帯)に相当する。同氏の著書『Richstan』(邦題はザ・ニューリッチ)は今年米国でベストセラーになった。

フランク氏が新富裕層社会を国家に例えたのには理由がある。第1の理由は新富裕層の所得が巨大であることだ。例えば2004年の米国で資産の長者番付をつくったところ、上位1%の年間所得総額はフランスの国民所得を上回っていた(参考:ザ・ニューリッチ)。

そして第2の理由として、新富裕層は自己完結する社会を形成している。例えば新富裕層は独自の社会サービス(医療や教育など)を受けられるので、一般社会と交わる機会が少ない。このような実態からフランク氏は「米国ではないもう一つの国家」の存在を指摘したのだ。

世襲的な資産家ではなく、自らの力で稼ぐ人々

仮想国家リッチスタンは、従来の富裕層社会とは異なる特徴を持つ。まず旧富裕層社会は世襲的な資産家が多いのに対し、リッチスタン人には80年代以降に新興した若い成功者(金融関係者・起業家・株主・高額給与所得者)が多い。

また旧富裕層社会では文化や価値観が均質であったのに対し、リッチスタンではこれが多様化している。例えば、リッチスタン人の中でも資産が比較的に少ない層は、政治的に保守志向だ。いっぽう中間層のリッチスタン人はリベラル志向を持つ。以上をまとめると、旧富裕層社会は村に近く、リッチスタンは国家に近い存在ということになる。

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