例えば、英国紙ガーディアン(1821年創刊)は2006年6月にWebファーストの新方針を掲げた。社名も Guardian Newspapers Limited から Guardian News and Media Limited に変更した。記事は24時間体制でWeb優先で掲載する。英語媒体という強みもあり、同社のWebを閲覧する人は、英国内だけでなく北米でも増加したという。
また、米国紙ニューヨークタイムズ(1851年創刊)も、紙媒体とWeb媒体の編集部門を一本化した。記者が執筆した記事は、いったんデスクのもとに集約。記事の性格によって、適切な発表媒体と公開タイミングを判断する。
さらに進んだ試みを行うのが米国の新聞チェーンであるガネット(USAトゥデイなどを発行)だ。同社傘下の新聞社でも、紙とWebの編集部門を統合。24時間体制のインフォメーションセンターを立ち上げている。またクラウドソーシング(群衆への外注)により読者を記事づくりに巻き込む試みや、モバイルジャーナリストと呼ぶ遊撃記者が「Webに記事を直接アップする」試みも行っている。
いっぽう日本では、産経新聞が同様の試みを行っている。スローガンは「ウェブ・パーフェクト」。同社が10月1日に始めた新サイト『MSN産経ニュース』において、スクープ記事をWeb優先で掲載する方針を採用した。また紙幅制限がないというWebの特徴を利用して「記者会見の全文掲載」や「公判の完全記録」などの長文記事も掲載する。記事の掲載期間は発表後2カ月から6カ月に延長した。
課題は、収益の確保と記事の質
今後、これらWebファーストの方針を掲げた新聞社は、Web媒体における収益の確保(広告収益の確保)が大きな課題となる。前述の新聞社の中では、ガーディアンが電子版において黒字を出している。ただし、英語圏に比べて潜在読者数が圧倒的に少ない日本語圏では、このような状況が訪れるのはまだ先のことかもしれない。
Webファーストのもう一つの課題が、記事の品質だ。Web優先を意識するあまり拙速な編集が行われてしまうのでは意味がない。この点ではWebファーストを掲げる新聞社の間でも、方針が分かれている。ガーディアンやニューヨークタイムズのように記事を一度編集部に集約する場合もあれば、ガネットのように、記者による直接配信を一部で認める場合もある。各社とも実際の運用を見ながら、程よい着地点を探しているのが現状であるようだ。
| 前のページ | 1|2|3 | 次のページ |
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
「時代を読む新語辞典」 バックナンバー 一覧ページへ
- 「デジタルフォトフレーム」 (2008/09/24)
- 「サイト監視サービス」 (2008/09/16)
- 「低価格ミニノート」 (2008/09/09)

