「インド式計算」

2007年8月21日

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

インド人が生活の中で伝承してきた「インド式計算」がブームになっている。この計算法を取り扱ったドリル本が多数出版されているのだ。この計算法を使えば、3けた同士の掛け算なども簡単に暗算できるようになる。

「IT大国化したインドで、どのような教育が行われているのか」を知るために、これらの書籍を購入する人が多い。また、出版界におけるトレンド「脳トレ」の新機軸として、インド式計算が持てはやされている側面もあるようだ。

インド式計算とは、インド人の生活の中で伝承されてきた計算メソッド(計算を工夫するコツ)の総称だ。この呼称は日本の書籍が独自に名付けたもので、現地では特に呼び名を持たない。メソッドは足し算、引き算、掛け算、割り算のそれぞれについて数多く存在する。インド人はそれらを初等教育や生活の中で習得しているため、日本人には暗算が難しい計算(例えば3けた同士の掛け算)でも簡単に暗算してしまう。

具体的なメソッドの例を挙げておこう。例えば28×25のように「4の倍数×25という形になる掛け算」の場合。最初の数を4で割ったうえで、最後の数に4を掛ける。7×100という形にするわけだ。すると答えが700であることがすぐに分かる。

インド式計算の出版ブームが起きる

このようなメソッドを紹介する書籍が、今年の春ごろから数多く出版されている。その発端となったのが、今年3月に出版された『インド式計算ドリル』(中村亨著/晋遊舎)だ。その後『脳をきたえるインド数学ドリル・入門編』(ニヤンタ・デシュパンデ監修/日東書院)や『インド式計算練習帳』(青志社)などが続々と登場した。本稿の執筆時までに、類書は20冊以上も出版されている。書店の中には、インド式計算のコーナーを設けるところも多い。

IT大国化したインドの背景を探る

このようなブームには、「IT大国化したインドへの興味」が大きく関係しているという。インドは現在、日本はもちろん、世界のIT産業にとって不可欠な存在になった。その国力がどのように培われたのかが、注目されている。実際、近年のインドは優れたIT技術者を数多く輩出している。例えばインドのタタ財閥系のITコンサルティング企業、タタ・コンサルタンシー・サービシズの場合、全世界にいる8万人強の社員のうち1500人以上が日本関連のプロジェクトに従事。300人が東京に常駐している。このうち200人はバイリンガル技術者だ。どうしてインドでは、これだけの技術者が育つのだろうか?

インドで優れた技術者が育つ理由の1つは、おそらく伝統的な算数教育の徹底ぶりにある。例えば日本人は掛け算を九九(81通り)までしか暗記しないが、インド人は一般的に19×19(361通り)まで暗記するという。一昔前までは30×30(900通り)ぐらいまで暗記した人もいた。また二乗の九九(1×1、2×2……30×30)も丸暗記する。このようにしてインド人は小さいころから算数の基礎体力を身につけている。これが、ゆとり教育を見直している日本人に新鮮に映った。

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