「介護難民」
(もり・ひろし=新語ウォッチャー)
医療と介護の現場で「介護難民」の増加を懸念する声が高まっている。医療制度改革の一環で、療養病床の数が2011年度末までに大幅に削減されるためだ。削減分の患者は、老人保健施設(老健施設)、ケアハウス、老人ホーム、自宅などへ振り替える。しかし、振り替え先となる施設やサービスは、現状では受け入れ態勢が十分ではない。このため難民が発生してしまう。
療養病床数の削減が発端
療養病床数の削減は、昨年成立した医療制度改革関連法に基づいた措置。療養病床利用者の約半数を占める「社会的入院」の解消を大きな目的としている。社会的入院とは、医療的な入院治療を必要としない人が、病院に入院し続ける状態を言う。家庭などの受け皿が存在しない高齢者が多い。1973年に老人医療が無料化となって以来、慢性的に「医療費の無駄」と指摘されてきた。
病床数の削減プランは、かなり大胆なものだ。現在、療養病床には医療保険ベースの医療療養病床と、介護保険ベースの介護療養病床が存在する。このうち医療療養病床を25万床から15万床に削減。介護療養病床は13万床を全廃する。これら全体を単純計算すると、23万人の患者があふれる。そこでこれらの患者を、老健施設、老人ホーム、ケアハウス、自宅などに振り替える。1人あたりの医療費は、療養病床よりも老健施設などの方が安く済むため、医療費の抑制につながる。
老健施設やケアハウスなどの受け入れ態勢は、十分でない
しかしながら老健施設やケアハウスなどの受け入れ態勢は、必ずしも十分な状態にない。そもそも介護施設やサービスの数が少ない。社会的入院の患者には、実は医療的措置(経管栄養や床ずれの処置など)を必要とする人が多い。これらの患者にとって、リハビリを本分とする老健施設の診療体制は不十分だ。さらに自宅での介護となると、家族の負担も大きい。高齢化の進展で増加した老老世帯であれば、なおのことだ。このため路頭に迷う高齢者が増えてしまう。
受け入れ態勢の整備は、まだ始まったばかりだ。例えば厚生労働省は、療養病床を老健施設に転換する際の支援策をまとめている。具体的には、施設内診療室での外来診療を認める、次の介護報酬改定で転換施設の介護報酬単価を高くするなどの支援も検討中だ。しかし、社会全体での介護サービスの拡充(在宅医療、在宅介護、有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅の整備など)は今後の課題となる。
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