「買い負け」

2007年6月5日

(もり・ひろし=新語ウォッチャー)

水産物の国際市場で、日本の「買い負け」現象が発生している。水産物に高値が付いてしまい、日本のバイヤーがこれを購入できなくなるという現象だ。近年、国際的に水産物の消費量が増えている一方、国内では消費者の「魚離れ」が進んでいることが背景にある。水産物の国際市場では、現在大きな構造変化が起こっている。

4月22日に政府が閣議決定した『水産白書』(2006年)では「買い負け」の様子を次のように報告している。例えば米国産マダラの場合、輸出先として中国とポルトガルが台頭したため、市場で価格高騰が起こった。具体的には1Kg当たり300円(1999年)から533円(2006年11月)に上昇。その結果、日本向けの輸出シェアは最近7年間で52.4%(2000年)から19.4%(2006年)に下がってしまった。似たような現象が他の魚でも起こっている。

欧米、中国で水産物消費量が大きく拡大、2015年には1100万トンが不足

現象の背景にあるのは、世界的な水産物消費量の拡大だ。特に、欧米と中国における増加が目立つ。地域別の消費量を見ると、日本では70年代中期から横ばい(年間800〜900万トン)で推移しているのに対し、EU・米国・中国では漸増している。特に中国では、80年代中期には年間1000万トンに満たなかった消費量が、2000年代に入り3000万トンを超えるようになった。

水産物の消費が増えた理由は、各地域によって異なる。例えば欧米では、健康志向の高まり、BSE(牛海綿状脳症)問題・鳥インフルエンザ問題の影響、寿司などの日本食がブームになっていることなどから、肉食から魚食への需要シフトが起こったと言われる。

また中国では70年代末から始まった経済発展の結果、沿岸部を中心に富裕層が増加。その富裕層が、それまでは高級魚とされていた「海の魚」(マグロなど)を食べるようになったと言われる。また流通インフラ(冷蔵庫や冷凍庫)が整備されたことにより、発展途上にある内陸部での消費量も増えているようだ。

このような事情から、今後の国際市場では、水産物の激しい奪い合いが発生する可能性が高い。国連食糧農業機関(FAO)は、1人あたりの魚介類消費量が、2015年には19.1Kgに増えると予測している(2001年の同消費量は16.1Kg)。そこで2015年には、世界で年間1100万トンの水産物が不足する可能性がある。

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