── 逆に火を点けてしまうわけですね(笑)。
五十嵐 医療用デジタルレントゲン装置用フィルム出力ガイドの受注も、この時に獲得したものです。これも、試作に10カ月かかりました。また、半導体製造装置向けにチタンを使った部品を加工する仕事も、この時に獲得しました。これも大変苦労しましたね。しかし、これまでの経験と、粘り強く試行錯誤を繰り返すことで、必ず出来るという自信がありましたから果敢に挑んでいった。24歳の時の経験がこの時にも活きました。
教える技術が備わってこそ、本当の職人だと私は思っています
── 五十嵐さんは、匠、マイスター、名工という呼ばれ方をしていますが、どの言葉が自分には適していると感じますか。
五十嵐 自分ではどうかわかりませんが、会社の肩書きとしていただいているマイスターが似合うのかもしれませんね。今の時代に合った言葉だという感じもしますし。ただ、職人という言葉は嫌いなんです。
── なぜですか。
五十嵐 昔から、職人は「技は盗むものだ」として、決して自分の技術を教えようとしなかった。それには理由があると思います。ひとつは、技術を教えることで、自分の立場が危うくなるという危機感。そして、もうひとつは教えるという技術を持っていない人が多いということです。自分でやる技術と、教える技術は別のものです。優れた技術を持っていることは職人としては当たり前。そこに教える技術が備わってこそ、本当の職人だと私は思っています。
今の若い世代には、「俺の技術を見て盗め」と言ったって通用しません。一方で、自分の技術を懇切丁寧に伝えたって、同じものが作れるわけがない。私は、出し惜しみをしないで若い世代に教えることにこだわっていきたい。そして、やらせてみる。相談にものる。私自身、教えてくれる人がいない中で育ってきましたから、その苦労は味あわせたくない。ただ、最後の回答は自分で見つけてもらうようにする。

現場では若い技術者に気さくに声をかけ、技術を伝承していく
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