最先端のIT企業を支える匠の技(2)
出し惜しみをしないで若い世代に技術を教えたい

(聞き手:大河原 克行=フリーライター)

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 富士通フロンテックの五十嵐清英さんは、匠という言葉が似合う。黄綬褒章の受章のほか、厚生労働省の「現代の名工」、新潟県からは「卓越した技能者」、中央職業能力開発協会からは「高度熟練技能者」の認定をそれぞれ受けていることからも、多くの人がその技能を認めるものだといえる。だが、五十嵐さんは「職人」という言葉が嫌いだという。なぜ、職人という呼称を嫌うのだろうか。

突然、仕事がなくなり、途方に暮れたことも

── 10.5インチのハードディスクのケーシング加工技術は、どんな影響を会社に及ぼしましたか。

富士通フロンテック・製造統括部第三製造部第一製造課に所属するマイスターの五十嵐清英さん。県立工業高校の講師を務める五十嵐さんは、若い世代の技術指導にも力を入れている

五十嵐 ミクロン単位の仕事が可能になったわけですから、会社そのものが変わった。この時、ひとつの技術が、会社を大きく変えることを体感しました。実際、売上高は、わずか1年間に、一気に10倍の規模にまで拡大しました。しかし、ご存知のように、ハードディスクの進化はあまりにも速い。3.5インチ時代の訪れとともに、大型のハードディスクの需要が減少し、しかも、低価格化の波に押され、海外で生産する流れが始まった。当社としても、これに代わる事業を模索する必要が出てきたのです。私が38歳の時のことです。 私の仕事も、作ることに専念していた立場から180度変わり、今度は、自分で仕事を探す立場になりました。ところが、富士通グループをはじめ、どこへ行っても仕事がない。生産拠点の海外移転が進んでいた時期ですから、こちらに回す仕事がないというわけです。1年間、歩き続けて、なんの成果も上がりませんでした。本当に途方に暮れました。その時に、こう思ったんです。「仕事をくださいという言葉を使うのをやめよう」と。

── かなり大胆な発想ですね。

五十嵐 言葉を変えてみたんです。「困ったことはないですか」というように。そうやって聞いてみると、困ったことがない会社なんてないんですよ。すぐに、「こんなことを考えているのだが、実現できなくて困っている」という話が出てくる。中には、「作れるものなら、作って見ろ」という話になるんです。こうなると、私もへそ曲がりですから(笑)、本気になって挑戦してみたくなる。「それならやって見ましょう」と。

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