最先端のIT企業を支える匠の技(1)
遅刻・無断欠勤の不良社員が、「悔しさ」をバネに、仕事に没頭

(聞き手:大河原 克行=フリーラーター)

 静脈認証やRFID(ICタグに記憶された個別情報を無線通信によって読み書きする自動認識システム)、ロボット、ATM、電子ペーパーといった最先端のIT技術を駆使した製品を開発・製造する富士通フロンテック。同社には、社内外から「名工」と呼ばれる技術者がいる。黄綬褒章を受章し、社内第1号となるマイスターの肩書きを持つ五十嵐清英さんだ。ミクロン(1000分の1ミリ)単位の精度で金属切削加工し、どんな金属でも、顧客の要求通りに仕上げる「匠の技術」が、そう呼ばれる由縁だ。例えば、医療用デジタルレントゲン装置用フィルム出力ガイドでは、フィルムに傷をつけず、滑らかに送り出すための加工技術が求められ、これを量産環境で実現するのは、五十嵐さんをおいて世界に2人といない。また、半導体製造装置や自動車のマフラーなどにも、五十嵐さんが持つ精密加工技術が生かされている。富士通フロンテック・製造統括部第三製造部第一製造課に所属する五十嵐さんが、最先端IT企業で果たす役割とは何か。

私の場合、匠とは、量産を前提とした技術を持つ人のことです

── 富士通フロンテックは、最先端のIT技術を駆使した製品開発で高い実績を誇っています。その分野に「匠の技術」が、なぜ必要なのでしょうか。

富士通フロンテック・製造統括部第三製造部第一製造課に所属するマイスターの五十嵐清英さん

五十嵐 私が所属している第三製造部は、モノづくりを主体とした部署です。富士通フロンテックが製造しているATMの重要部品などのほか、富士通グループ以外の企業から受託した切削加工や金型加工による部品の製造を担当しています。もともと富士通フロンテックの前身となる蒲原機械工業(その前身は金岩工作所)では、金型製造や切削加工部品の製造を行っており、この流れが現在でも続いています。実は、こうした金型および切削技術が、富士通フロンテックが持つ大きな特徴の一つといえるのです。他社からの受託によって生産している医療用デジタルレントゲン装置用フィルム出力ガイドは、フィルムに印刷された際に傷がつきやすく、その傷が誤診の原因になることもある。こうした傷をつける可能性がある突起を、ミクロン単位で削る精密な切削加工技術が求められるのです。

富士通フロンテックでは、精密金型の製造、高硬度材の三次元精密切削加工、薄板材の高精度加工、アルミ材の高速加工などの技術を生かし、より高い品質の製品を、量産品として世の中に提供することができる。一般的に匠というと、伝統工芸のように一品モノに技術を発揮する人を指すことが多いのですが、私の場合は、量産を前提とした技術という点が異なります。

医療用デジタルレントゲン装置のフィルム出力ガイド。ミクロン単位で削る精密な切削技術が必要とされる

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