木の振動板を使ったイヤーヘッドホン(2)
良いものをきちんと作っていけば、お客様に受け入れられる
(聞き手:林田 孝司=フリーライター)
(前回記事はこちら)
日本ビクターが開発した密閉型インナーイヤーヘッドホン「HP-FX500」。木の振動板を完成させた後、すぐに開発が軌道に乗ったわけではなかった。木へのこだわりは筐体(きょうたい)へも及んだ。木が生み出す最高の音を追求して、湿度や環境など、より高いハードルを越えなければならなかった。そして、よりよい音を目指してのチューニングが続く。原音により近い音を目指して、自分の耳を頼りに、ギリギリまで粘った。そして、そのこだわりがヒットへの軌跡となる。
── とことんこだわって、インナーイヤーヘッドホンでは世界初の木の振動板が完成したわけですね。今回は筐体部分にも木を採用していますが、これは見た目のデザインを優先した結果なのでしょうか。

日本ビクターのモバイルAV事業グループ AVCアクセサリーカテゴリー 技術部 第1設計グループの主席技師、伊藤誠さん
伊藤 確かに、外観の大部分を占める筐体、我々はハウジングと呼んでいますが、ここに木を使うことで、木の自然なイメージを伝えたかったのは事実です。しかし、目的は見た目だけではありません。オーディオの世界では、スピーカーボックスに木を使っています。音は振動板の動きが空気に伝わって起こります。しかし、それではただの音で“オーディオの音”としては成り立ちません。音色として成立させるには、スピーカーでもヘッドホンでも、振動板を含むドライバーユニットとハウジングの組み合わせで、響き、バランスなどを調整します。
ハウジングには一般的にはプラスチックを使うことが多いのですが、素人が聞いても木のハウジングのほうが良い音がするのは分かります。それはヴァイオリンやピアノのボディが、プラスチックではなく木でできていることから明らかで、最終的に音を響かせて出す素材として木は理想的な素材なんです。我々プロの技術サイドは、もっと論理的なところで木のハウジングの音が良い理由が分かっていたので、どうにかしてインナーイヤーヘッドホンにも応用できないかと考えました。しかし、これがまた頭を悩ます原因になったんです。
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