仏料理の☆☆シェフが、ファストフードのバーガーを変えた(2)
「俺のつくったチーズバーガー」を武器に上司や業者を説得

2008年3月12日

(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)

(前回記事はこちら

 嶋原博氏自ら「一切の妥協はしていない」と自負する「絶品チーズバーガー」。だが、これが世に出るまでには社内の反対も多くあった、という。特に問題となったのは、360円という店頭価格だ。社内には「この値段では売れない」、「食材の質を落としてでも安くするべきだ」という声が強くあった。

 しかし嶋原氏は一切、妥協しなかった。フランス料理のプロとしてのプライド。味を落とさない範囲でギリギリまでコストを切り詰めていたこと。そして何より「絶品チーズバーガー」の出来栄えに絶対の自信を持っていたからである。

── 「絶品チーズバーガー」を開発するにあたって、苦労したことはありますか?

嶋原 特にないですねえ(笑)。会社からオーダーを受けたのが5月。その翌月の6月には試作品ができてたから。俺はチーズに関してはプロフェッショナルだし、肉やパンについてもフランスでしっかり勉強してるからね。だから開発そのものはごくスムーズでしたよ。

ロッテリア 嶋原 博氏

で、試作品を会社の上層部をはじめとする関係者に食べてもらって、味については好評を得た。ただし、試作品のままでは売ることが難しいので、ブラッシュアップを始めたんです。これは少々試行錯誤しました。それが苦労と言えば苦労だったかもしれない。まあ、それでも1カ月程度の話なんだけどね。

オペレーションとコストの2点について、特に入念にブラッシュアップしました。「オペレーション」とは店頭での調理方法のマニュアル化です。パンはこう焼く、ミートパティはどれくらいの温度で、どれだけ加熱する…、という具合に記録を取ってマニュアルをつくっていったんです。開発するのは俺でも、調理するのは店頭のアルバイトさんだからさ。店によって味のバラつきがあったらお客さんに申し訳ないですしね。

「コスト」とは、味は試作品のレベルを保ちつつ、店頭販売価格を下げるための作業です。先に言ったように「絶品チーズバーガー」はごく良質の食材を使ってる。当然、値段もそれなりに高くなる。でも、まさかロッテリアで1000円のハンバーガーを出すわけにはいかないでしょ(笑)。もっとも俺の性格からして、どうしても1000円で売るしかないと判断すれば、ロッテリアを辞めて自分で店を立ち上げただろうと思いますけどね(笑)。

味は落とさず価格を落とすためにはどうするか。食材の特性を考えて、チーズバーガーに最適なものを取捨選択していくことです。誤解している人が多いんだけど、料理はトータルのバランスが大事だからね。なんでもかんでも最高級の食材を使えば美味しくなるというわけではないんです。

例えば一般的に牛の内もも肉は肩肉より高級とされていて、値段も高い。だからといって肩肉は内もも肉より不味いのかというと、決してそんなことはないんです。下ごしらえや調理の仕方ひとつで内もも肉と同等以上の味になる。食感ではむしろ勝っている部分もある。

つまり肩肉の配合を増やすことによって味のレベルを保ちつつ、コストを下げることができるんです。同様のことはチーズについても、またパンについても言える。

だから「絶品チーズバーガー」はすべての食材を細かく指定してるんですよ。牛肉は内もも肉と肩肉を使い、9ミリの粗びきとすること。チーズはグリュイエールチーズとレッドチェダーチーズをこれこれのブレンドで。パンは一等粉を選び、これこれの工程でつくること、という具合にね。そんなことをしているハンバーガーなんて、日本じゃこれ以外にないと思いますよ。

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