── 良質の食材を使ってハンバーガーを作れば美味しくなるのは当然でしょう。でもそれはコストに跳ね返る。会社の本音としては、従来からあるチーズバーガーを、コストが負担にならない程度にブラッシュアップして美味しいものを作ってほしかったのでは。

嶋原 それはどうでしょうねえ。実は、会社からのオーダーはただ一言、「美味しいチーズバーガーをつくってくれ」だけだったんですよ。コストについても、内容についても何も言われなかった。だから俺としては「美味しいチーズバーガーを」というオーダーに忠実だっただけで(笑)。

それにね、もし会社の本音が「従来のチーズバーガーをブラッシュアップする」だったとしても、それじゃ他の大手ファストフードチェーンと同じじゃん? 残念ながらロッテリアは、ブランド力や店舗数では決して一流とは言い難い。そんなチェーンがほかと同じことをやっていたら、絶対に勝てないですよね。こういうことを言うと会社の人には怒られちゃうんだけど。

「ブランド力」で思い出したことがあります。俺が入社して何度か、学生のアルバイトと話をする機会があったんです。彼らは学校でこんな会話をすることがあるそうですよ。「お前、どこでバイトしてるの?」「ああ、スターバックスだよ」。これだと「お洒落だね」と言ってもらえる。ところが「ロッテリアだよ」と言うと、「ふーん」で終わりなんだって。実に象徴的な話でしょ。

いくらアルバイトといっても、仕事にプライドが持てないのは辛いですよね。もちろん、すべてのアルバイトがそうだというわけじゃないけどさ。ところが「絶品チーズバーガー」の発売以来、そういう状況が少しずつ変わってきたんですよ。一生懸命つくった「絶品チーズバーガー」を、目の前でお客さんが「美味しい」といって食べてくれる。あっという間に売り切れる。そういう体験をすることで、誇りを取り戻している。

「絶品チーズバーガー」は、おかげさまであちこちのメディアに取り上げてもらっています。「美味しい」というお客さんの声はブログなどにもたくさんある。それはロッテリアのブランド力の底上げや集客力に一役買ってると思う。実際、「絶品チーズバーガー」を販売している店舗はみな売り上げを伸ばしてますからね。そういう意味では、やはり開発して良かったなと思うし、また開発すべきだったとも思うんですよ。

ただ俺自身は、「絶品チーズバーガー」がヒットしたからといって、これといった感慨はないんですよ。当たり前のことを、当たり前にした。だから売れた。その程度のものですね。社内的には次回作への期待も当然あるんだろうけれど、特にプレッシャーは感じてないし…。俺の仕事は、美味しくて売れるものをつくること。その職務を全うしただけですよ。(第2回へ続く

諏訪 弘

1970年生まれ。広島県出身。大学卒業後、新聞社・出版社勤務などを経て、現在はフリーランスのライター・エディター兼カメラマン。PC・ビジネス系 をはじめ、エンタテインメントや書評関連などの仕事を多く手がける。

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