── どんな難関ですか。

市川 日本の市場性を考えた場合、キャップ式だけでなく、ノック式の商品化が必要でした。ところが、ノック式を実現しようとすると、インクにも工夫が必要になる。インクにある添加剤を入れると、ノック式にも十分対応できるインクが完成します。ですが、JETSTREAMが目指すなめらかさが出ない。それで、また試行錯誤が始まったわけです。

そのときに、海外営業部門が、海外向けにまずキャップ式だけで商品化してくれることになった。商品化の道ができた。このときは、うれしかったですね。

ただし、海外においても、油性ボールペンとして売るにはやはり価格競争力が必要です。「とにかくコストダウンするにはどうするか」を考えなければなりませんでした。そこで出てきた案が、リフィールの構造を、キャップ式、ノック式のどちらにも適応できる設計にする、というものでした。リフィール用の生産ラインが一つで済むのですから、そのコストダウン効果は大きい。

これは、ノック式を将来必ず市場投入することを前提にし、その際の量産効果を期待した先行投資です。ところが、この案を決定した段階では、なめらかな書き味を維持できるノック式用のインクは完成していない。キャップ式の商品化をコミットをしてもらったが、裏を返せば、ノック式対応インクの開発が絶対条件となった。もう逃げられない状況がつくられてしまったのです。

その後、何度も試行錯誤を繰り返しインクの配合を変え、結果として、納得できるものを出すことができました。

そのほかにも、問題は山積でした。例えば、リフィールの生産ラインの調整が難しく、量産直前になっても、予定の20分の1の生産能力しか出せなかった。とにかく、困難の連続でした。

── 困難にぶつかったときはどう解決するんですか。

市川 まずは、言われたことをトコトン考える。「なぜ、そう言われたのか」、「課題を解決するためにはどうするのか」。様々な角度から考え、最適だと思う方法をやってみる。

気分がリセットできないときには、飲みに行って、騒いで、パーっと忘れて(笑)、それでもう一度考えてみる。キャップ式およびノック式の共有リフィールは、たばこを吸っているときに思いつきました。あまり大きな声では言えないのですが、実は私は、もともと油性ボールペンの書き味が嫌いなんですよ(笑)。どうしても、重く感じてしまう。

── えっ、そうなんですか。

市川 ずっと水性ボールペンを使っていました。今は、JETSTREAMを使っていますけどね(笑)。でも、油性ボールペンの書き味の重さが嫌いだからこそ、JETSTREAMを開発できたとも言えます。

大河原 克行

日経トレンディネットの「大河原克行のこれは“にゅーす”です」の連載をはじめ、月刊宝島(宝島社)、PCfan、WindowsMode(毎日コミュニケーションズ)などで連載および定期記事を執筆中。

著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」、「松下電器 変革への挑戦」、「作るキヤノンを支える売るキヤノン」、「ネット通販で年商100億円」、「パソコンウォーズ最前線」などがある。

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