“油性ボールペン嫌い”が油性ボールペンをヒットさせた(1)
新製品案のプレゼン、「こんなものが売れるのか?」

2008年2月20日

(聞き手:大河原 克行=フリーライター)

 三菱鉛筆の油性ボールペン「JETSTREAM」が話題を集めている。油性ボールペンは一般的に広く使用されているものの、書き味が重い、黒く濃い色が出ないなどの課題が指摘されている。JETSTREAMは、こうした課題を解決するために、設計を抜本的に見直した製品だ。発売以来のキャッチフレーズは「クセになる、なめらかな書き味」。

 2003年11月に海外で出荷を開始して以来、2006年末時点の累計出荷は1000万本。短期間にこれだけ売り上げたボールペンは、近年、例を見ない。現在でも、国内市場だけで月平均60万本を出荷する人気ぶりだ。“油性ボールペン始まって以来の大改革”と言われるJETSTREAMは、どうやって生まれたのだろうか。

── 油性ボールペンは、ボールペンの定番です。なぜ、定番と言われる製品分野において、新たな製品作りに挑戦したのですか。

市川 ご指摘のように油性ボールペンは、公文書をはじめとする幅広い場面で、幅広い年齢層の方々に使われています。

三菱鉛筆 横浜研究開発センター 市川 秀寿課長

ボールペンには、油性ボールペン、水性ボールペン、水性ゲルインクボールペンの3種類があります。その中でも油性ボールペンは最も歴史が長く、最もポピュラーなものになっています。国内の筆記具全体の約25%を占めていますから。

言い換えれば、成熟した製品なんですね。どのメーカーの油性ボールペンも溶剤は一緒。2-フェノキシエタノールとベンジルアルコールの混合物であることに変わりはない。さらに、水性ゲルインクボールペンのような華やかさもない(笑)。このため、誰も「インクを変える」という発想を持たなかったのです。

── そこにあえて挑戦した?

市川 いや、そうではないんです。私は1990年の入社以来、はんこやスタンプ台といった印章製品の研究開発を担当していました。油性ボールペンの研究開発部門へと異動したのは1999年末のことです。あまり言葉は良くないのですが、そのときに与えられたテーマは、私にとっては決して面白いものではありませんでした(笑)。ただ、野放し状態だったということもあり(笑)、自由に溶剤の組み合わせを実験することができたんです。50種類以上の溶剤を検討し、最終的に1万種類以上の組み合わせを実験しました。

前のページ 1|2|3 次のページ

あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください

「ビジネス・フォアフロント」 バックナンバー 一覧ページへ

ビジネスABC > ビジネス・フォアフロント
RSSで最新記事を読む

PR