取扱説明書専用のファイルをつくる(2)
プロの目とユーザーの視点の食い違いを埋めるよう努力

(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)

(前回記事はこちら

 『取扱説明書ファイル』の2度目の提案はすんなり了承された。だが、発売にこぎつけるまでの道のりは必ずしも平坦なものではなかった。

 小ロット生産を格安で受けてくれる協力工場の選定、「使いやすさ」の模索、そして消費者にアピールするための仕掛け…。高橋氏は「私の好きにやらせてもらった商品ですが、生産・販売、ヒットまでには多くの人の協力があった」と強調する。

高橋さんは『取扱説明書ファイル』の開発・発売にあたって、具体的にはどのようなことをしたのでしょうか。

高橋 まず企画の提案ですね。それから形状デザインも担当しました。そのとき最初に考えたのが耐久性でした。先にお話ししたように、従来のファイルに厚みのある取扱説明書を入れると、いずれ破れてしまう。いろいろとテストを繰り返して、従来のファイルの4倍の厚みのあるフィルムを採用しました。いわゆる「クリアホルダー」と呼ばれる書類挟みがありますよね。あれと同じ材質です。

キングジム 高橋 荘太郎氏

次に、使い勝手を意識して形状を決定しました。「説明書保管用」とうたうからには、世にある取扱説明書の大部分を収納できる必要があります。そこで友人知人・社内の人間にも声をかけて、片っ端から取扱説明書を集めました。電化製品を中心に300冊くらいはあったと思います。

それだけ数を集めると、取扱説明書の「傾向」が見えてきます。まず判型は、ほぼ100パーセントがA4に収まる。次に厚みです。取扱説明書の大部分は2ミリから3ミリ。もちろん、ものによってはそれを超えるものもありますが、それでも8ミリを超えることはめったにないことも分かった。そこでマチ幅は8ミリと決定しました。これで世にある取扱説明書のおよそ95パーセントは収納できます。

「使い勝手」について言うと、取扱説明書を出し入れしやすいよう斜めに切り欠けを入れました。私が特に意識したのは「A5や文庫本サイズの取扱説明書でも出し入れがしやすく、A4サイズのものもしっかりホールドできるように」ということです。切り欠けを広く取れば小さい取扱説明書は取り出しやすくなりますが、逆にA4サイズのものは不安定になる。そもそも相反する要件なのです。

これは、実際に封筒を切り貼りしてトライ&エラーを繰り返し、妥協点を見つけるしかありませんでした。試作品を30枚以上はつくったと思います。その過程の中で、切り欠けは直線にするのではなく、ゆるやかなカーブを描くようにしたほうがいいことも分かりました。引っかかりがなくなって収納しやすくなるためです。一見、どうということもない部分に見えますが、実はこの点が私の試行錯誤の結晶なのです(笑)。

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