世界初! 樹脂の便器を作る(2)
目の前の課題を一つひとつつぶしていくのは最も近道
(聞き手:大河原 克行=フリーライター)
(前回記事はこちら)
有機ガラス系樹脂を使った世界初の家庭向けトイレの開発は、いきなり課題山積の状態から始まった。素材を担当する松下電工の丹生貴也主査は、それらの課題を一つひとつ解決していった。その解決が、従来の衛生陶器では実現できなかった付加価値まで引き出すことになった。
アラウーノが、発売から1年で5万台を超える出荷台数を記録する大ヒットとなった理由は、丹生氏を中心とする技術者らの、課題解決への地道な取り組みにあったと言えそうだ。
──陶器は、硬いブラシでゴシゴシと磨くことができますが、樹脂は傷が付きやすい。こうした問題がありますね。

アラウーノの利用シーン
丹生 多くの方がそう思っているでしょう。ですが、実は、有機ガラス系樹脂はかなり耐久性があります。この指摘に対しては、すぐにクリアできる自信がありました。とはいえ、それを一つひとつ実証して、納得してもらわなくてはならない。
まずは、たくさんのブラシを買い込んできて、実験をしてみました。確かに研磨剤の入ったブラシを使うと、樹脂に傷ができます。しかし、亀の子タワシやポリプロピレンでできたブラシを使っても傷はつきません。一般的なトイレブラシであれば、いくらゴシゴシやっても問題がないんです。それと、もともと水アカがつきにくい素材ですから、そんなにゴシゴシする必要がない。
──つまり、掃除をしなくてもいいと。

丹生 貴也氏 松下電工 住建総合技術センター樹脂複合材料開発グループ
丹生 水アカが付きづらい樹脂の強みを生かして、「掃除する必要がない」、あるいは「いちばん嫌なトイレ掃除から解放される」とことを訴求できないかと考えました。まさに逆転の発想です。掃除の手間から逃れられるというのは主婦にとっては最大の魅力ですから(笑)。そこを強調できるようになるには洗浄チームの努力がありました。泡洗浄方式を採用して、流すたびに便器が自ら掃除をしてくれる機能を搭載してくれた。これによって、掃除面での課題を、むしろ強みにしてしまったのです。
もうひとつ、多くの人が心配するのが、強度に対する不安です。人間が腰掛けるわけですから、かなりの強度が求められる。しかし、アラウーノが使用する素材は、水族館の巨大水槽や戦闘機のキャノピーも利用しているものです。極めて高い強度があるのです。いっぽうで、耐薬品性や溶剤への対応は、大きな課題でした。
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