主婦に人気! 重曹を加えた新発想のタワシ(2)
商品開発の仕事は「役者」になること
(聞き手:諏訪 弘=フリーライター)
(前回記事はこちら)
『パワーズ重曹ブラッシュ』の開発チームに与えられた開発時間は半年足らずだった。これは過去に例のない短さだ。開発担当の明神恭弘氏は、ありもの素材の中から最適なものを見つけ出すことで、時間的な制限をクリアした。「日ごろからいろいろなものを見て歩いた経験が役に立った」と明神氏は言う。
──『パワーズ重曹ブラッシュ』の商品化を提案したのはいつですか。

明神 恭弘氏 エステー商品開発グループ
明神 2006年の9月です。「大反対がありましたが、なんとか押し切りました」……と言いたいところですが、提案はあっさり通りました。ですから、このあたりでの苦労談はないのです。
もっとも『パワーズ重曹ブラッシュ』を提案する以前から「重曹を主役にした商品を作りたいな」と思っていて、何度か提案を繰り返していました。それが苦労と言えば苦労だったかもしれません。重曹を固形にする。スプレーにする。液状にする……。いろいろ提案しましたが、社の上層部からはいずれも「売れないよ」の一言で却下されていました。
──発売は翌2007年の3月ですね。開発期間が短いように思いますが。
明神 はい、異例の短さです。『パワーズ重曹ブラッシュ』の提案が通ったとき、社の上層部には「これは売れそうだ。だから春には出せ」とプレッシャーをかけられました。私もかなり無理をしました。いや、「無理させました」といったほうがいいのかな。
短期間で開発・発売にこぎ着けることができたのは、素材選びが比較的スムーズにできたためです。『パワーズ重曹ブラッシュ』の使い方を考えると、ある程度の厚みが必要になる。厚みがあるものというと、すぐに思いつくのがスポンジです。しかし私は『パワーズ重曹ブラッシュ』をスポンジにしようとは思わなかった。スポンジは素材を発泡させて作ります。この構造では重曹や研磨材を添付できる量が少なくなってしまうのです。当然、洗浄効果も落ちる。

パッケージに入った重曹ブラッシュ
一方、タワシは繊維を重層化した構造になっており、必要十分な量の重曹や研磨材を添付できる。「よし、これで行こう」と決めました。ところが、ことは簡単には進みませんでした。今度は必要な厚みを持ったタワシ素材が見つからない。正直、「商品化は無理かな」と考えたこともありました。
しかし、「エアコンのフィルターを使ってみたらどうだろう」とふと思いついた。エアコンや空気清浄機などに使われているフィルターをイメージしてください。私は、どこかで厚みのあるフィルターを見たことを思い出したのです。
そこで専業メーカーにお願いして試作品を作ってもらいました。すると、まさにイメージ通りのものが上がってきたのです。これは、うれしかったですねえ。前述したように私は、日常生活の中から新商品のアイディアを得ます。その一環として、日ごろから、東急ハンズやスーパーなどいろいろなところを回り歩いている。手芸屋さんなど、普通の男性ならまず行かないであろうところにも足を運ぶ。この経験が幸いしました。
しかし、それよりもっとうれしかったのは、社内外でモニターテストをして「あれは良く汚れが落ちるね」と言われたときです。特に社内の人間は、商品の性能がイマイチだったら絶対にそんなこと言ってくれませんから。
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