「動かない」ことで「お〜いお茶」を伸ばす(2)
過去の苦い経験を思い出し、「動かない」を貫いた
(聞き手:大河原 克行=フリーライター)
(前回記事にこちら)
2004年を境にして、熾烈(しれつ)な緑茶飲料の競争が始まった。飲料メーカーとしては、伊藤園よりも規模の大きな企業が、緑茶飲料に参入してきた。そこで伊藤園が選択した戦略は、「動かない」だった。なぜ、伊藤園は動かない選択をしたのか。
なぜ、「動かない」という選択をしたのですか。

中嶋 和彦 伊藤園 商品企画本部 商品企画一部長
中嶋 ちょうど商品企画部の中で、「5年先」をテーマにした勉強会が始まっていました。伊藤園が「今後、飲料メーカーとしてどう成長していくべきか」、「競合とどう戦っていくべきか」ということを、今後5年のスパンで考えようというものです。
そこで、「お〜いお茶」の強みは何か、弱みは何かを考えた。言い換えれば、何を伸ばすべきか、何を改善すべきかを検討した。強みは、長年の実績から、馴染みやすい、親しみやすいというブランドイメージができていること。また、国産茶葉を使い、製法にこだわっていることが理解されており、品質面での高い評価もある。では、弱い点は何か。競合製品は、上質感を打ち出してきましたから、見栄えという点では見劣りして見える部分がある。
「お〜いお茶」も上質感を打ち出すという選択があり得ましたね。
中嶋 確かにその選択肢はありました。もちろん、社内からもそういう意見が出ました。しかし、緑茶飲料の本質は何か。それは「おいしさ」でしかない。そして、おいしさには、舌で感じる「味」と、鼻で感じる「香り」が非常に重要。それならば、「おいしさ」と「香り」にもう一度こだわろうと。ちょうどこのとき、技術部門が独自の「自然抽出・フレッシュ製法」を進化させ、「香り」の品質をさらに向上させることができた。だからこそ、「動かない」という選択をしたのです。
緑茶飲料にとって、「香り」はとても大切なんです。鼻をつまんで、緑茶を飲んでみてください。何を飲んでいるか分かりませんよ(笑)。風邪を引くと、味が分からなくなるのも、このためです。
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