特集:
誰もに可能性がある虐待行為
社会全体で問題解決に取り組み姿勢が求められている

 厚生労働省発表の資料によれば、平成16年度中に児童相談所が処理した養護相談のうち「虐待相談の処理件数」は3万3408件、前年度に比べると25.7%増だった。この数字は今年だけの傾向ではなく、年々これに等しいペースで増加を続けているのが現状だ。

 出生数は減少傾向にあるにも関わらず、虐待相談件数がこれほどのハイペースで増えている理由は一体どこにあるのだろうか。15年に渡って子どもの虐待を考えてきた、社会福祉法人子どもの虐待防止センターの専任相談員である天野智子氏に話を聞いた。

2006年1月19日

児童虐待に対する意識や認識の変化

 昨年11月、厚生労働省から児童相談所における『虐待相談の処理件数』に関するデータが発表された。相談件数は3万3408件、前年度から6839件(25.7%)も増えているのだ。この結果と比例するように、子供の虐待防止センターへの電話相談件数も年々増えているが、同センターの専任相談員である天野智子氏は「虐待が急増しているのではなく、虐待に関する法整備がなされたり、マスコミで虐待事件が報道されたりと、社会全体の虐待に対する意識が変わりつつあります。それが相談件数の増加につながっているのではないでしょうか」と語る。

子どもの虐待防止センター専任相談員
天野智子氏

 報道される虐待事件は、乳幼児を床や壁に叩きつけたり、食事を与えなかったり、極寒の屋外に放置したりといったショッキングな事例ばかりである。それゆえに、命が危険にさらされるような虐待事件ばかりが起きていると思いがちだが、実際には子供の心を傷つける言葉を放ったり、ケガしない程度に叩いたりといった、見過ごされがちな虐待も非常に多い。

 また、虐待という言葉の受け止められ方が変わってきた。かつては親がしつけのつもりなら多少の暴力は許されていた感があるが、昨今は子供の受け止め方を重視し、たとえ愛情に基づく暴力であっても、子どもの心身に傷が残る場合は虐待とみなされる。事実、子供が死に至るほどの虐待をした親でも、自らの行為を振り返って「しつけのつもりだった」と語るケースがあるのだ。

 「子供がどう受け止めているかを客観的に判断して、虐待か否かを見極めますが、目で見える傷と違って心の傷は時間がたってから分かることが多く、判断が難しいケースも少なくありません。また、心に傷が残るかどうかは子どもの傷つきやすさにも関係しています。同じことを言っても、お兄ちゃんは大丈夫だったのに、妹の心にはキズが残ったというケースもあります」(天野氏)。

児童虐待防止法に基づく『虐待』の定義

 そもそも虐待とは何か。平成12年交付の「児童虐待の防止等に関する法律」には「保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者)がその監護する児童(十八歳に満たない者)について行う」いくつかの行為を指すとある。

 虐待の対象となる行為には、(1)身体的虐待、(2)性的虐待、(3)ネグレクト(養育の拒否や放置)、(4)心理的虐待の4種類がある。

 ただしDVが関係すると、問題が複雑化するケースが多い。例えば、内縁の夫のDVのせいで母子ともに傷ついているのに、母親はDVの呪縛で内縁の夫と別れられず、DVも児童虐待も解決できないという状況だ。母親の呪縛を解かない限り、母子に平和は訪れないだろう。

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