ココを押さえろ! 今冬のインフルエンザ
B型の傾向と対策
体温低めでタミフルが効きにくい
子供がインフルエンザにかかり、「私は熱はないんだけど、だるくて」と話す親を念のため検査すると、実はB型だった──。昨シーズン、そのような場面に何度も遭遇したのは、川崎市高津区で開業する小児科医の廣津伸夫氏(廣津医院院長)だ。患者も医師も、「まさか」というのが実感だろう。
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班のまとめでは、昨シーズンにB型インフルエンザに罹患した患者のうち、16~64歳の成人では、A型の患者よりも発症時の体温や最高体温が有意に低いことが分かった(発症時体温はA型38.1℃、B型38.0℃、最高体温はA型38.7℃、B型38.5℃)。
さらにこの年齢層のB型では、インフルエンザの診断基準の一つである38℃を上回らなかった患者も多い。その比率は28%に達し、A型の17%を大きく上回った(図6)。つまり成人では、検査をしなければ見落としてしまう、低体温のB型インフルエンザ症例が少なくないといえる。
しかし、小児ではA型でもB型でも発症時体温や最高体温に差は見られない。さらに高齢者では、型を問わず、最高体温が38℃を上回らない患者が4割以上を占め、その数はむしろA型の方が多いという傾向が出た(図6)。

東京都老人医療センターの増田氏は、「B型はA型よりも症状が軽いといわれていたが、昨シーズンの高齢入院患者ではB型でもA型と変わらない重篤感があり、驚いた」と話す。小児や高齢者では、A型でもB型でも重症化への注意が必要だ。
解熱が1日近く遅れる
B型で、もう一つ臨床医の大きな注目を集めているのは、タミフル(一般名オセルタミビル)の効果がA型よりも低いという点だ。
日本臨床内科医会の検討では、タミフルの初回内服から解熱までの時間が、B型の方がA型よりも13~17時間ほど長かった。年齢層別の比較でも有意差が出ており、例えば7~15歳の小児では、A型では27時間で解熱するところをB型では44時間かかっていた(図7)。

仮に患者が朝一番で診察を受け、タミフルを内服したとすると、A型では翌日の昼には解熱するが、B型では翌々日の早朝にならないと解熱しないということになる。患者にしてみれば、この違いは大きい。
さらに、咳もB型の方が遷延する。A型では咳の平均持続時間が105時間だったのに対し、B型では138時間と、1日半近くの差が見られた。
けいゆう病院の菅谷氏のまとめでも、B型インフルエンザの小児患者のうち、6~7割は2日以内に解熱するが、残りの3~4割は熱が長引く傾向があったという。こうした知見から、迅速診断検査でB型と判定した場合、患者には発熱や咳が長引く可能性があることを伝え、注意して経過を観察する必要がある。
同医会のデータを取りまとめた河合氏は、「迅速診断キットが普及していなかったら、こんなにB型インフルエンザを拾い上げることはできなかった。B型の臨床症状や治療効果を知るという意味で、昨シーズンは貴重なシーズンだった」と語る。
B型にはリレンザが効く?
それにしても、なぜB型ではタミフルの効果が低いのか。 菅谷氏は「B型ウイルスのタミフルへの感受性が、A型よりも低いのだろう」と話す。抗ウイルス薬の感受性を検討する際、その薬剤がウイルスの増殖を50%阻害する濃度(IC50)が指標となる。 ある報告(Antiviral Research 2002;54:143-7)によると、タミフルのA香港型に対するIC50は0.73nM、B型では11.53nMと、10倍以上の開きがあり、B型に対する感受性が低いことが示されている。
一方、リレンザ(ザナミビル)のA香港型に対するIC50は2.09nM、B型へのIC50は4.15nMであり、B型に対する感受性がタミフルよりも高い。つまり理論的には、リレンザの方がB型インフルエンザへの治療効果が期待できるわけだ。
実際の臨床現場で、リレンザのB型インフルエンザに対する効果を調べた報告は少ないが、B型では今後、リレンザの積極的な利用を検討する価値がありそうだ。
この連載のバックナンバー
- 緊急提言 「新型インフルエンザ」感染地域が急速に拡大中 あなたと家族を守る「3つのポイント」+「1」 (2009/04/30)
- 3月リンク集:オフィスセキュリティ (2009/04/01)
- 2月リンク集:身近にある危機 (2009/03/01)
- 1月リンク集:米国と日本 (2009/01/30)
- 12月リンク集:歳末の防犯・防災 (2008/12/25)

