特集:
ココを押さえろ! 今冬のインフルエンザ
こうした現象を検証しつつ、迫り来る2005/06シーズンに向けて、臨床医が押さえておきたい新たな知見と注意点をまとめた。
文/野村 和博、亀甲 綾乃、風間 浩(日経 メディカル)
2005年11月16日
『日経メディカル』は創刊33年の歴史を持つ総合医学雑誌です。臨床の第一線で活躍する10万人以上の医師に愛読されています。「安全・安心」は、今日の医療における重要なキーワードの一つであることは言うまでもありません。11月号の特集で取り上げたインフルエンザも、「安全・安心」を確保するための準備がとりわけ大事な問題といえるでしょう。
インフルエンザに関して今一番ホットな話題は鳥インフルエンザですが、同時に、毎年やってくる従来のA型、B型への備えを怠ってはなりません。この特集は医師向けに書かれたものですが、一般の方々が読んでも、今冬のインフルエンザから身を守るのに役立つ「確かな情報」がたくさん見付かるのではないかと思います。
『日経メディカル』では、そのような観点から、医師向け専門誌の編集で蓄積したノウハウを活かした一般向けの医療関連書籍も多数発行しています。書店で『日経メディカル編』の本を見かけたら、そんな背景を思い出しながら手にとっていただけると幸いです。
(風間浩/日経メディカル編集長)
検 証
昨シーズンに起きた3つの“想定外”
想定外その1 B型が過去10年で最大の流行
「あれほどたくさんのB型インフルエンザの患者を診たのは初めてだった」。 東京都老人医療センター感染症科医長の増田義重氏は、2004/05シーズン(以下昨シーズン)を振り返ってそう話す。同センターでは、昨シーズンに91人のインフルエンザ入院患者を受け入れた。 2月はその8割がB型の患者で、A型患者に比べて圧倒的に多かった。
全国的に見ても、B型の流行はA型を大きく上回っていたようだ。 国立感染症研究所ウイルス第三部第一室長の小田切孝人氏によると、昨シーズンのインフルエンザ流行は、過去10年間で最も大きい規模で 全国で分離されたインフルエンザウイルス約6000株のうち、B型が56%を占め、A香港型(H3N2)が41%、Aソ連型(H1N1)が3%だった。
流行の立ち上がりは例年よりも遅く、感染症発生動向調査における定点当たりの患者報告数のピークは第9週(2/28~3/6)にずれ込んだ。 ウイルス分離状況から、B型の流行はA型とほぼ同時期に始まっていたことが分かる(図1折れ線グラフ)。

通常、B型ウイルスはほぼ1年おきに流行し、A型に遅れてピークを迎える。 こうした傾向に照らすと、昨シーズンは、B型の流行がA型と同時に始まった点が異なるほか、B型の流行規模としても過去10年で最大だったことも特筆すべき点だろう。
B型が大流行した理由について、小田切氏は「正確には分からない」とした上で、「シーズン前の調査で、B型株に対する国民の抗体保有率がA型株に比べて低かったこと、また一般にB型株はA型株に比べてワクチン接種者の抗体価の上昇が悪いという性質も影響したのではないか」と話す。
なお、昨シーズンのB型ワクチン株は、山形系統と呼ばれる株だったが、全国で分離された流行株の99%が山形系統株であり、うちワクチン株と抗原性が類似する株は97%を占めていた(図1円グラフ)。つまり、抗原性という点ではB型ワクチン株は“当たっていた”ということになる。一方、A香港型では、後半になるほどワクチン株と抗原性が異なる株(抗原変異株)が増え、最終的には全体の21%を占めた。
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