やっていいこと悪いこと30

パブリックドメイン化に揺れる著作権

 今、著作権法は、さまざまな立場の人の思惑の下で揺れている。著作権には保護期間がある。原則は、著作権者の死後50 年。映画は公表後70年。保護期間が過ぎると、著作物は「『パブリックドメイン』として、みんなのものになるのが前提」(知的財産高等裁判所の三村量一判事)だ。

 つまり、一定期間は著作権者が経済的な対価を得られるようにして、その創作活動を支え、保護期間が終わったら、だれもがこれを自由に利用できるのが著作権法の趣旨。新たな文化の創造に貢献するための制度なのだ。

「知的財産高等裁判所」って何?
2005年4月1日に東京高等裁判所に設置された、知的財産権関連を専門に扱う特別支部。特許権、プログラム著作権など高度に技術的な判断が求められる訴訟の一審は東京地裁と大阪地裁に限定されており、その控訴審などを担当する


ハリウッド映画もパブリックに

 現実に、パブリックドメインを利用する活動は始まっている。

 例えば、著作権の保護が切れた書籍をボランティアが入力して投稿するWebサイト「青空文庫」。収録作品数は約4800。夏目漱石の「我輩は猫である」も、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」も、まるまる全文、無料で読める。

 1997年に「青空文庫」が発足した当時から世話人を務めるライターの富田倫生氏は、「身体の不自由な人を含め、みんながパブリックドメインの恩恵を享受できるようにするには、だれもが利用しやすいファイル形式にするなどの工夫が必要」と話す。

 映画でも動きがある。ブレーントラストは2001年6月から、パブリックドメインになったハリウッド映画などのフィルムを買い付け、これをコンテンツ提供するビジネスを開始した。現在、同社が扱っているタイトルは約160。「風と共に去りぬ」「誰が為に鐘は鳴る」「雨に唄えば」など、往年の名作も多い。同社はこうした作品を500円で販売するDVDの事業者などに卸しているのだ。

 また、ブレーントラストでは新たに、病院の病室向け配信サービスにも映画の提供を開始。近々、インターネットでのコンテンツ配信にも映画を提供する計画だという。

 ただ、著作権法が定められた当時は及するとは予想できなかった」(日本国際映画著作権協会)という声は、著作権者を中心に大きい。

保護期間を70年に延長?

 デジタル技術とインターネットにより、だれもが簡単に劣化なく著作物を複製でき、限られた事業者しかできなかったコンテンツ配信まで手軽に行える…。そんな状況に、現行の著作権法は対処しきれていないというのだ。

 現在、文化庁の文化審議会では、著作権法の改正などを検討中。最大の争点は人気の携帯音楽プレーヤー「iPod」も私的録音補償金の上乗せの対象にするかどうかだが、そのほか著作権制度の根幹にかかわる問題として、現行では著作者の死後50年の著作権の保護期間を、欧米同様、70年に延長することなどが検討課題に上っている。

 同審議会では「今後3年ぐらいで順々に課題を検討する」(文化庁長官官房著作権課の鈴木宏幸法規係長)というが、次々と新しいサービスや事業が生まれる中、現実的な対応を迫られている。

「私的録音補償金制度」って何?
デジタル方式の録音機材の登場にともなって作られた制度。録音機材の価格に一定金額を上乗せしてユーザーから徴収することで、著作権者に自由な複製に対する補償をする。MDや録音用CD-R(音楽用CD-R)などには補償金が上乗せされている


著作権が切れた書籍が読める「青空文庫」 著作権が切れたハリウッド映画などを提供する会社も
■著作権が切れた書籍が読める「青空文庫」

「青空文庫」では、著作権が切れた書籍をボラン ティアが入力。だれもが無料で読むことができ る(左)。1997年の「青空文庫」発足当時から世 話人を務める富田倫生氏
■著作権が切れたハリウッド映画などを提供する会社も

著作権が切れているハリウッド映画などを500 円DVDなどの事業用に提供するブレーントラス ト。平山宏行常務が直接、米国などでフィルムを買い付けている

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