備えあれば憂いなし?!防災グッズ特集(オフィス編)

周りを巻き込んで、意識を高めよう――伊東義高氏

ヤルデア研究所 伊東義高氏

 もしオフィス内で地震に遭った場合、生き残るためには日ごろからどのような備えをしておくべきなのか。オフィス防災の心構えや具体的な対策を、職場や家庭での実践的地震防災対策に詳しいヤルデア研究所の伊東義高氏に聞いた。

 「オフィスの防災対策といっても、建物の構造や築年数、階数、地盤などによって揺れ方は大きく異なります。また、家具のレイアウトや人口密度、収納物の種類などによって、受ける被害も異なってきます。つまり、“これだけやっておけば絶対に大丈夫”というものがあると言い切ることはできません」──こう伊東氏は語る。

 災害対策においても、マニュアルが重視されがちだが、実践的な地震対策はマニュアルでは対応しきれないと伊東は言う。重要なのは、“自分のオフィスの防災は、自分でやる”という考え方。自分が働いているオフィスなら、どんなプロよりもその機能や空間を理解しているはずだからだ。

 特に家具の配置や収納方法などは、日ごろから自分たちで考え、工夫しながら取り組むのが一番よい。自分ひとりでなく、職場の上司や同僚、部下を巻き込み、全員で行うことが、一人ひとりの防災意識を高めることになり、大震災が起きたときの死亡確率を減らすことにもつながる。

 「何も対策をしていないと大地震での死亡確率は平均0.2%、オフィスでケガをする確率は平均5%だそうです。確率はゼロにはなりませんが、その確率を様々な対策を施すことで少しでも下げることが大切なのです」(伊東氏)。

 そのためにも最低限しておくべきこととして、伊東氏は『オフィス家具の固定』を挙げる。デスクの上にあるパソコンも、揺れ方によっては“飛んでくる”凶器となるため、固定しておく必要がある。その際、伊東氏が推奨しているのは、『家具は床を粘着ゴムで止め、さらに裏側をL字金具を逆向きに止める』という固定法だ。これなら強度も高く、見た目も損なわれない。パソコンはしっかり固定してしまうと使いにくいので、机の脚にワイヤーのようなもので止めるのがよいそうだ。

防災力別 大地震死亡率イメージ(資料提供:伊藤氏)
東京消防庁『家具類の転倒実験』より

 さらに地震が起きたときは、むやみに動き回らず、机などの下にもぐって揺れがおさまるのを待ち、落下物によるケガを防ぐのが基本である。言い換えれば、デスクの下に、自分が入れる程度のスペースを確保しておかなくてはならない。

 「一目で分かるような老朽家屋でなければ、最近のビルは地震で全壊することはまずありません。しかし、家具は震度5を超えれば倒れるので、そうした家具や飛来落下物から身を守る対策が必須なのです。机の下を片付けることは、誰もが日ごろから行うことができるはずです」と伊東氏は強調した。

 家具やパソコンの固定、レイアウトの変更などは、地震が起きたときに命を守るための防災対策といえる。防災セットなどは、災害が起きてから必要な事後対策グッズだ。

 「もちろん防災グッズをそろえるのはいいことです。しかし、セットになっているものを買ってきただけで安心してしまい、いざというとき、どこにしまったのか忘れてしまっては何にもなりません。そうならないためにも、防災グッズは本当に必要なものは何かを考えて、自分たちで集めるのがよいと思います。例えば、自宅まで歩いて帰る必要が出てくることも考え、ロッカーに用意しておくスニーカーも、防災グッズといえるからです。また、そうした作業を通じて地震のときの自分の行動もイメージ出来るようになるはずです」(伊東氏)。

逆L字金具による家具固定法(資料提供:伊藤氏)

家具転倒防止器具の耐震強度(資料提供:伊藤氏)

 地震対策といっても、今までに震度5以上の揺れを体験したことがある人はそう多くないだろう。本当の巨大地震が起こる前に、一度、「起震車」などで震度5や震度7クラスの揺れを体験しておくことを伊東氏は薦めている。災害時、最も危険なのはパニックになることだが、そうしたことを一度体験しておくことで、その意識も軽減することができるからだ。

 また、震度5や震度7クラスの揺れが起きたとき、一体どういう行動が取れるのかを知ることもできる。

 「地震対策は、やればやっただけ効果はありますし、安心感も出るので、いざというとき落ち着いた行動を取ることができるといえます。地震が来たら、まずは机の下にもぐり、机の脚をつかんでください。落ち着いたら、周囲の様子をよく見て、同僚に声を掛けるようにすればよいでしょう。実際、大きな地震がきたら誰でも慌ててしまうはずです。だからこそ、シンプルな行動を心掛けてください」と伊東氏は強調した。

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。