ソフトが弱い企業の新型インフルエンザ対策
虫明 これまで、行政、国の対応をみてきたのですが、パンデミックは国が対策をしていれば乗り切れるというものではない、という認識はさらに広がってきているのではないかと思います。この点については米国のガイドラインなどでも政府ができることは限りがあるということが明確に書かれていて、コミュニティー、企業、個人がやることも多いというふうなことが規定されているんですけれども、次に企業の対策について話を進めたいと思います。
インターリスク総研さんが上場企業を対象に今年の5月、6月に行ったアンケート調査ですが、回答があった上場企業のうち、従業員3000人以上の大企業の場合で見てみたいと思います。
「“パンデミック・フル”迫り来る新型インフルエンザの脅威」パネルディスカッション会場より
新型インフルエンザの対策を行っておりますかといったことについて、対策済みが20%、計画策定中が33%、今後対応するが29%で、82%の大企業さんが既にやっているかあるいは今後やる予定、近く終わらせる予定であるといったふうな形で、今非常に対策が進んでいるという様子が分かります。
ところがこれを回答全体、従業員3000人以下の企業の方も含めますと、対策の予定なしというのが52%、半数以上にも上って、中小企業さんと大企業さんの間での対策の進み具合というのは非常に大きく違っているというのが分かります。
さらに、実際にやっていらっしゃるという企業さんのなかで具体的にどんなことをやっていらっしゃるのかという内容なんですけれども、マスクや消毒薬などの備蓄、62%、それから抗ウイルス剤の備蓄、これも20%近くまでいっております。それから社員の啓発は65%までいっている。非常にこう、物は揃っているんですが、一方、事業継続計画という一番重要なところになってきますとまだ19%、さらにはそのなかで重要なパートを占める、重要役職者の権限継承体制といった問題になってくると10%を切り、また自宅勤務体制、これもその事業継続に重要なパートですけれども、それもまだ10%になっているという形で、やはり物の準備はどんどん進んでいる。物はあるけれどもやはりソフトの部分というのが非常にまだ弱いんだといったことが分かってくると思うんです。
木船さん、こうした今の対策の現状についてどんなふうにお考えでしょうか。
木船 そうですね、BCPといいましても、今回のケースは通常のBCPでは考えられない状況なんです。無理やり継続してしまうと、これは感染拡大させてしまうというところがありまして、どこで割り切るか、どこで腹をくくるかというところが非常に重要になってきます。すばやい閉鎖が人的資源と社会を守るわけでして、それがひいては円滑な再開を保障するわけですので、通常の地震のリスクシナリオとは全然異なるのです。
例えば資源の比較をしてみますと、地震でしたらあらゆるリソースがいっぺんにぐしゃっとやられてしまう。ところが新型感染症でやられるのは人間だけ、上のほうのリソースは無傷で残っているということです。例えば、新型インフルエンザでしたら、地震とは違って、東京と大阪のコールセンターが同時閉鎖に追い込まれるというようなことが起きます。さらに持続時間ですね。地震で1週間といったら、これは例えば首都直下地震の場合の電気が来るまでの時間。新型インフルエンザだと、人が死ぬような危機的状況、緊急事態、これが1年から2年続くわけですので、通常のBCPではないということをぜひご理解いただいて進めていく必要があると思います。
虫明 国や東京都の行動計画の中に、感染拡大予防のために企業の活動に制約を加えざるを得ないというような部分が非常に多くあって、これが長く続きますと企業の方にとってはまさに死活問題にもなってくるわけです。先ほど島田さんのほうからもお話を伺ったのですが、そのあたりについては東京都さんとして具体的にどんな連携を取ろうとしていらっしゃるのか、もう少しお話をいただければ。
島田 はい、実をいいますと、東京都は直下型地震に関してのBCPというのはほぼつくり終わりまして、11月中にも発表できる段階まで来ました。それで、では新型インフルエンザについてはどうなっているんだという話になりますと、現在新型インフルエンザ対策ということのBCPは都庁自身が持っていません。ただ、我々はぜひ21年度中、来年度中には都政のBCPをつくりたい、というふうに思っております。
それでぜひお願いといいますのは、各企業の皆さまに関しましても、それぞれの企業でBCPをおつくり願いたいと思っているところです。
新型インフルエンザの場合には海外に助けは求められないし、求めてはいけない。不用意に感染を増やすだけだと思っています。そういう意味で、ぜひ東京都のなかにある皆さんと一緒になって、それぞれのBCPをつくりあげることによって、この新型インフルエンザ対策に当たっていくという、そういうふうな全体としての東京都の力強いパワーを、各企業の皆さんと一緒になりながら結集していきたいと心からそう思っております。
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