新型インフルエンザ対策は社会全体で考える
押谷 まだいろいろと問題があって、いろいろな議論が今なされているのですが、そのいくつかをご紹介すると、まず今、日本は厚生労働省が中心になって新型インフルエンザ対策をやっています。これは実は、本当は望ましい形ではないと思っています。
WHOは実は今、世界の新型インフルエンザ対策のガイドラインを改訂しているのですが、そのなかでWHOが非常に大きなウエイトをおいて強調していることは、Whole-of-society-approachということです。つまりパンデミックが起きると、これは医療とか保健の問題だけではない、社会すべてに影響が起こるので、そういう意味で社会全体がこの問題を考えなければいけないというのが、今WHOがやっていることなんですね。そういう視点がまだ日本には欠けています。
東北大学大学院医学系研究科微生物分野教授 押谷 仁氏
米国は、以前はDHHS(Department of Health & Human Services)という、日本でいうと厚生労働省にあたるところが中心になってやっていたんですが、3年前から、HSC(Homeland Security Council)、日本語でいうと国土安全保障会議、大統領直属の機関が中心になってやるというふうに変更になっています。そういう形で日本も本当は内閣府とかそういうところが中心になって、日本全体の、社会全体の問題として取り上げる必要があると思います。そういう意味では皆さんの会社でも、これを産業医とかそういう人たちに任せておくのではなくて、やはり会社のトップが中心になって、会社全体でこの問題を考えるということが必要なんだと思います。
もう一つ日本のなかで欠けていることは、企業の対策でも通じることなんですが、物を買う、金を使うことはするんですが、ソフトの部分がどうしても欠けている。日本も虫明さんから先ほど紹介があったように、タミフルの備蓄とかは膨大な金を使ってやっているんですが、ではその備蓄されたタミフルをどうやって配布するかとか、そういったソフトの部分というのは、まだ日本には欠けている部分だと思います。
皆さんが新型インフルエンザ対策を考える上でも、マスクを買っておけばいいとかタミフルを買っておけばいいというものではありません。それを実際にどうやって使うのか、どうやって実際に起きたときに行動するのか、それは訓練を繰り返していくとか、そういうことのなかで見えてくるものだと思います。そういう視点でこれからやはり新型インフルエンザ対策というのを、国のレベルでもそうですし、都道府県のレベルでもそうですし、皆さんのところでもそうだと思うんですが、大きく見直していく必要があるんだというふうにわたしは思っています。
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