新型インフルエンザの脅威には、こう立ち向かえ!

急速に整備される東京都・国の対策

虫明 それでは次に、実際に東京都で感染が広まった場合にどのような対策を都として取られていこうとしていらっしゃるのか。東京都の感染防御対策などについて、島田さんのほうからお話をいただこうと思います。

島田 東京都の行動計画というのはいったいどうなっておるのかという話ですけれども、東京都には皆さんご存知の通り1280万人います。それ以外に、昼間に東京で働いている方々がおり、非常に密集した都市です。

 流行予測は30%としました。それをいろいろと看病する人を勘定に入れまして40%は出て来られないというようなことを考えています。恐ろしい話ですが、外来の受診者数378万、今ですら東京の病院というのは大変に忙しく、必ずしも十分な体制とはなっていないなかで、新たに400万人の人が来たらいったいどうするか。それから死亡者、いちおう1万4100人と出ていますけれど、その方々の葬儀葬祭はいったいどうするんだ、というようなことも考えているところです。

 対策の考え方は、人と人との接触をなるべく少なくして患者数を抑え、かつ時間を引き延ばすことによってワクチン開発をしていこうというふうに思っています。

 わたしどもの都では、今の行動計画を作成した後ですけれども、現在までに104万8000人分、タミフル、リレンザを持っている。これでもやはり不十分とのことで、84億円をかけて今年度中にタミフルとリレンザ合計で400万人分まで持とうと思っています。タミフルが200万人分、リレンザが200万人分。将来的には800万人分を目標にしているところです。こういった計画によって、わたしどもも新型インフルエンザの発生は抑えることはできないというふうに思っていますので、実際に起きたらどういうことをしていくべきかという対策をやっていきたいと思っているところです。

虫明 ありがとうございます。東京都さんは、新型インフルエンザの対策においては非常に早くから、国に先駆けて対策をつくってこられたということがわたしも非常に印象深く思っております。

 それでは、これまで企業、東京都さんの対策についてお話を伺ってきたのですが、日本における新型インフルエンザ対策の大枠をつくっているのは、国です。次に、国の対策はどうなっているのか。そしてその対策というのは十分なのかというお話を進めていきたいと思います。

NHK報道局科学文化部記者 虫明 英樹氏 NHK報道局科学文化部記者 虫明 英樹氏

 日本は2005年に国としての行動計画をしたためて新型インフルエンザの出現に備えた対策の体系をつくっております。

 例えば今日、インドネシアですとか中国で、ヒト-ヒト感染を疑わせる集団感染が起きたという情報が入った場合には、ただちに厚生労働省の内部でリスクについての検討を行います。そしてこれは実際に、人から人にうつりはじめる新型インフルエンザが出現したのではないか、その可能性が高いと分かった場合には、情報はすぐに官邸にあがります。そして関係省庁の対策会議が開かれ、関係閣僚会議が開かれ、さらにWHOが実際にフェーズ4を宣言するというような段になれば、総理大臣をトップとした対策本部が立ち上がることになっています。ここが、国が大流行、パンデミックの際に行動計画を行っていく中枢の部分になります。

 では実際にどんな対策を行っていくのか。まず行われるのは水際作戦です。とにかく日本にウイルスを入れない。そのために、今の行動計画の中では空港と港の七つに絞り込むことが決まっています。その七つの空港と港で入国する人たちに検疫を行い、感染していないかを確認するために10日間程度の停留、実際そこに留まってですね、国内にすぐに入って来ないようにするといった措置が取られます。そしてこうした時間稼ぎを少しでもしている間に、感染防御の柱となるワクチンの接種体制を整えます。

 プレパンデミックワクチン(※)ですけれども、このワクチンは皆さんご存知のように、東南アジアや中国で流行っているH5N1型の鳥インフルエンザからつくられたもので、今、国内で2000万人分タンクに入って貯蔵されています。これを社会機能維持者と呼ばれる人たち、医療従事者でありますとか、検疫の担当者、警察官、国会議員、自治体職員、電気・ガス・水道、ライフラインの担当者、そしてわたしも含めたマスコミ、通信の方などおよそ1000万人が対象になっているんですけれども、こういった人たちが接種を受けます。

※ 新型インフルエンザ発生前に、現状の鳥インフルエンザウイルスから製造するワクチン

 また、一般の国民の皆さまにも、フェーズ4以降になりますと新たに出現した新型インフルエンザウイルスをもとに、パンデミックワクチンというのを作り始めます。この製造には、今の段階では半年程度はかかりますので、第一波には間に合わないのではないかという問題点が指摘されています。さらに国民の中に多数の感染者が出てくることは避けられませんので、治療用として抗ウイルス剤のタミフルが2800万人分、これも国が備蓄しております。

 そして、こうした対策をいろいろ打っても、最終的には国内での感染というのをとどめることはできないといふうにみられておりますので、そうした場合には大規模集会や興行の自粛、学校の休業、国民への外出自粛要請といったものが行動計画のなかでは述べられておりまして、国民生活、そして企業の活動に大きな影響を与える対策というのが取られることになっています。

 こうしてみていきますと、今の国の対策というものは数年前から比べると充実してきているんですけれども、実際にこうした対策で十分なのかどうか。まず押谷さんのほうから話を伺えますでしょうか。

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