従業員のみならず、近隣社会に対しても責任を果たす
虫明 震災との比較が出てまいりましたけれど、ひとたび新型インフルエンザの流行が起きた場合には、それとは比較にならないくらい大きな被害が起こり得る可能性があるんだということがよく分かったかと思います。そうしたときに、実際にそのパンデミックフルー(世界的に流行するインフルエンザ)に対して企業がどんなふうに対策を打つことができるのか、次に木船さんからお話を伺いたいと思います。
木船 わたしどもの基本方針を披露申し上げますと、最優先すべきは人の安全、従業員の命、これを守ることですね。ただし、人の安全というのは従業員のみならず、近隣の社会の方、すべてのステークホルダーに対して責任を果たすものでなくてはいけません。我々は、患者が発生したら、すみやかに該当事業所を立ち入り制限する。それによって感染拡大防止、これが従業員の命を救うことであり、ひいては社会へまん延する速度を多少なりとも遅くすることができるのではないかと考えています。
その際、例えばどこそこの支店で患者が出ました、従いまして、何月何日からこの支店は立ち入り制限いたします、というようなことをきちんと社内外に公表していく。いわゆるリスクコミュニケーションが非常に重要になってくると思います。これらによって社会的責任を全うする。基本方針のなかのキーワードは二つです。社員の命を守るということ。そして企業としての社会的責任を果たすということです。
人事の規制ですけれども、どなたが考えましても、だいたい論理的にやれば同じようなところに帰結すると思います。出張移動の規制、発生国への出張移動は原則禁止、あるいは帰国した場合の検疫隔離、発生国からの帰国者は10日間の自宅待機、感染者との接触疑いがある場合も、これも10日間の自宅待機。これは、実は新型肺炎SARSのときに我々が取った対策そのものなんです。このSARSのときの経験をなさった方々は、ぜひ国内にも水平展開してください。
それから、SARSのときと大きく異なる人事規制。国内外どこであってもフェーズ4(WHOのパンデミック警報で、ヒト-ヒト感染が増加している状態)になりましたら、健康自己評価を全員にやってもらいます。毎朝出勤前に、家族など同居人を含めまして38度以上の熱があるか、それからインフルエンザ様症状の有無をチェックしていく。そうして感染の疑いがあれば、例えばお子様がそういう状況であっても、お父さんもお母さんも職場に出てきちゃダメということに決めております。症状がなくなりました、お医者様にタミフルなりリレンザなりを処方されて48時間で熱が下がっちゃいました、もうピンピンしているから明日から会社に行きます、ということにしてはいけません。症状消失後、通常7日間ウイルスをまき散らしているというふうにお聞きしましたので、余裕をみて10日間は出社してはいけませんというところまで決めております。
それと、やはりまん延させないというところでは、事業所、オフィスなどの立ち入り制限対策です。先ほどの健康自己評価によって疑いありとの連絡を受けましたら、発生現場は立ち入り制限の準備に入ります。そして確定ということが分かりましたら、24時間以内に事務所を立ち入り制限したいと思っております。24時間といいますのは、例えば1人の患者が2人にうつすというケースを考えた場合、24時間以内になんとかシャットダウンできれば、インフルエンザは発症前日から感染力がありますので、7人でなんとか防げる。ところがこれを5日間放っておきますと31名。30日間放っておいて何も介入しないでいると26万数千人ということで、一つの町が滅びてしまうというようなことになりますので、とにかく素早い立ち入り制限、これが社員の命を守り、ひいては近隣社会をも守るということです。
それと現在やっておりますのが全員啓発と個人装備の配布ということでして、例えばWBT(Web Based Training:インターネットやWWWの技術を利用した教育)などをやるのがいいのかもしれませんが、その環境のない社員もおりますので、最後は紙媒体に頼るしかないということで、10万枚ほど刷りまして、富士フイルムホールディングスも富士フイルムも、それからわたしども富士ゼロックスもまったく同じものを使いまして啓発用の資料を配っている。そして、いわゆる不織布のマスクと消毒剤をいま個人に配っている。現在のところはこういった状況です。
虫明 自分の会社の中で感染者が出たときに、いかに迅速な対応ができるかというのがその後の鍵になってくるのかということを非常に強く感じていただいたと思います。もし自分の会社の社員が誤った行動をしてウイルスを広めてしまった、あるいは社員以外の方に感染を広めてしまったのであれば、その会社に対するダメージというのは本当に計り知れないものになるかと思います。そういった面でも、今のうちから社員の方たちの間に、基本的な新型インフルエンザに対する理解を広めておくことと、会社全体のなかで迅速な対応を取ることが重要になるかと思います。
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